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リアルタイムあと払いを可能にするAffirmの仕組み―「魔法ではない、数学だ」

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Affirm という米国の FinTech スタートアップをご存知だろうか?

Affirm(アファーム)は、簡単にいうと、ECで購入をする際に「Pay with Affirm」という「あと払い(分割払い)」オプションを提供してくれるスタートアップだ。既に$720Mを調達し、ユニコーン入りを果たしている。

「あと払い」の領域は、国内でも、先月に「メルペイあと払い」が発表されるなど、信用スコアの盛り上がりとともに、注目が集まってきている。

そこで、本記事では、Affirmの仕組みや導入が進んでいる理由に迫っていくことで、あと払い(分割払い)系サービスについて考えていきたい。

Affirm の会社概要

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まず、簡単に Affirm という会社自身について整理しよう。

Affirm は、2012年の創業でこれまでに$720M(約792億円)を調達しており、ユニコーンクラブの仲間入りを果たしている。

共同創業者のうちの一人、Max Levchin 氏は、Paypal の創業者兼元CTOに加え、Google の Vice President of Engineering も務めていたいわゆる「ペイパルマフィア」である。

本社は米国サンフランシスコに位置しており、シリコンバレー発の代表的な FinTech 企業の1つといえるだろう。

Affirmのビジネスモデル「Point-of-sale Financing」

次に、Affirm(アファーム)のビジネスモデルについて簡単に解説しよう。

冒頭でも述べて通り、Affirm は、ECや旅行予約サービスなどのオンライン事業者向けに、「Pay with Affirm」という形で「あと払い(分割払い)」の購入オプションを提供している。

たとえば、以下のキャプチャのようなイメージである。

Pay with Affirm (Alternative Airlines 公式サイトより)
Pay with Affirm (Alternative Airlines 公式サイトより)

「あと払い(分割払い)」のオプションを選択すると、次に、ユーザーは自らの氏名や電話番号、ソーシャルセキュリティーナンバー等を入力する。

その情報をもとに、Affirm独自のアルゴリズムでリアルタイムに分析をすることで、「あと払いオプションの可否」と「金利」がその場で即時に決定されるという仕組みだ。

「リアルタイムで人の手を介さずに判断を下す」というテクノロジーが、既存のあと払いサービスとの差別化ポイントであり、Affirmの真骨頂である。

このような、購入タイミングにおける「あと払い(分割払い)」オプションの提供のことを、「Point-of-sale Financing(購入時点の融資)」といったりもする。

事業者目線でみると、ユーザーの購入意向が最大限に高まっているタイミングで、あと払いのオプションを用意することでお財布の紐をゆるめ、CVRの向上につなげていくというわけだ。

また、ユーザー目線でみても、特にクレジットカードを持っていないような人にとっては、「あと払いオプション」を利用することで、本当に買いたい瞬間に後回しをせずに購入をすることができる。機会を逸することがなくなる。

2019年3月現在、Affirmは約400のブランドで利用されており、CASPER(マットレス)等の家具類、WERBY PARKER等のアクセサリー、Expedia等のトラベルサービス、Simply Mac等の家電製品など、様々なオンラインショッピングをサポートしている(対応ショップの一覧はこちら)。

Affirmのスコアリングの仕組み

では、あと払いや分割払いの肝となる「信用スコアリング」については、どのように行っているのだろうか?

NewYorkTimes誌によると、Affirm の共同創業者兼CEOの Max Levchin 氏は、次のように語っている1

Affirm 共同創業者兼CEOの Max Levchin 氏
Affirm 共同創業者兼CEOの Max Levchin 氏

It's not magic, it's math.

魔法ではない、数学なのだ。

(Affirm Co-Founder & CEO, Max Levchin)

ここで「数学」と言っているのは、ユーザーのデータから全てアルゴリズムで判断をすることで、あと払い(分割払い)の可否や利率を決定しているという意味だ。

クレジットカード以外の分割払いオプションを利用する場合、一般的には、人のチェックが入るようになっている。

日本でいえば、たとえば、Appleで分割払いをする際は、オリコによる審査となり、審査の完了連絡までには15分〜1日の時間を要する形になっている。

人の手を介しているため、どうしてもリアルタイムに実行することは難しいという状況だ。

これに対して、Affirm では、審査プロセスを全てアルゴリズムで自動化することによって、リアルタイムの審査を可能にしているというわけである。

利用しているデータは、米国の既存の信用調査会社のデータを参照する形をとっており、それを元に独自のアルゴリズムで判断をしている。

信用調査会社のデータにアクセスする際には「Soft Check(ソフトチェック)」と呼ばれる信用スコアへのマイナス評価のない形式をとっている。さらに、Affirm の分割払いをきちんと支払うことで、その返済データは信用調査会社 Experian へ送られることになっている。そして、もちろんポジティブな評価として処理される。

これにより、Affirmでは、信用スコアを傷つけることなく、むしろ信用スコアの向上に役立てることができるため、「Credit Building(信用構築)」に利用できるという見方もできる。

オフライン店舗への対応も

さらに、Affirm は、2018年3月より、オフライン店舗への対応も始めている2

Affirm APIをPOSシステム側で連携するか、あるいはAffirmのバーチャルカードを利用することで実現することができる。

Affirmバーチャルカードイメージ
Affirmバーチャルカードイメージ

バーチャルカードの連携については、アプリ上で発行されたバーチャルなクレジットカードを Apple Pay に簡単に追加することができるため、店舗側の負担も少なく、これから広まっていくかもしれない。

同社のリリースによると、先行してオフラインでの Affirm 分割払いを導入していた Simply Mac では、平均単価が20%上昇するという結果が得られたという。

平均単価は上昇し店舗の収益は上昇し、消費者は欲しいタイミングで購入できることで満足し、Affirm は収益機会に拡大に加え、オフラインの決済データを手に入れることで、さらなるアルゴリズムの改善にもつなげていくこともできる。

まだまだオフラインの決済金額比率はオンラインよりも大きい。オフラインへの展開は今後の Affirm の肝となるだろう。

類似プロダクト

このような「あと払い(分割払い)」を可能にするサービスとしては、同じく米国では「Zibby」、スウェーデン発でヨーロッパを中心に展開する「klarna」、インドネシア発で東南アジア諸国で展開する「Akulaku」等がある。

また、日本国内でも、Gardiaによる「Gardiaあと払い(ガルペイ)」などの新たなサービスが登場している他、メルペイが自社サービス内にて「メルペイあと払い」を開始すると発表したことも記憶に新しい。

ネットプロテクションズの「NP後払い」や、Paidyの後払いオプションも、個人毎での上限金額や金利の差はないが、後払いという意味ではすでにサービスインしている。

このように、ユーザーの信用をスコアリングすることで、「購入タイミングにおける金銭面でのサポート」を施すようなサービスは世界中で出てきている状況だ。

まとめ

本記事では、Affirmのビジネスモデルや信用スコアリングの仕組みについて整理をしてきた。

「Point-of-sale Financing」という領域は、ユーザー導線として自然な流れであり、だからこそ、いかに最小工数で購入完了までを妨げずに行うことができるかがポイントとなるだろう。

そうなった時に、Affirm のようなリアルタイムの自動判断アルゴリズムは必須となってくる。

日本でも、クレジットカードを持たない若年層を中心に、今後さらにニーズが高まってくるかもしれないだろう。

プレーヤーとしては、メルペイがペイメント機能の外部提供を開始するとのことなので、今後、Affirm と同様の立ち位置も取っていくことになるのかもしれない。

Affirm について整理をする中で、改めてメルペイのポジショニングの良さを思い知った。この領域は今後さらに面白くなりそうなので注目していきたい。