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信用スコアを「アップグレード」、英国スタートアップ Aire の思想と仕組み

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信用スコアリングサービスを提供するイギリスのスタートアップ Aire をご存知だろうか?

「信用スコアに『アップグレード』を」という標語を掲げ、既存の信用スコアの抱える課題に対して、独自のアプローチにより新たな信用スコアリングを可能にしている。

2019年2月4日にはシリーズBで約12億円の増資を発表し、今まさに波に乗っている企業だ。

本記事では、そのような Aire の概要、思想、スコアリングの仕組みについて解説していこう。

「信用スコア」について詳しく知りたい方は「信用スコアとは?仕組みとサービス事例を日本中国米国中心に徹底まとめ」をご覧ください。

Aire の会社概要

Aire はサービスの名称で、正式な会社名は Aire Labs 。主には、サービス名の Aire のほうで呼ばれている。

2014年にイギリスで設立され、総額約25億円を調達している。直近の増資ラウンドでは、信用調査及びデータ分析を行うグローバル企業エクスペリアンも資金を投じており、同社との事業シナジーも期待できそうだ。

CEO の Aneesh Varma 氏は、JPモルガンのM&A部門出身のシリアルアントレプレナー。大学では、アルゴリズムシステム及び数理ファイナンスを学んでおり、まさに信用スコアリング事業に適任の人物といえるだろう。

Aire のミッションは、以下の通り。

to help lenders make more informed decisions, and to ensure everyone gets the credit they’re due.

(お金の)貸し手にもっと情報に基づいた決断をさせてあげること、そして、全ての人が正当な信用を得られるようにすること。

このミッションを実現する方法が、信用スコアのアップグレードというわけである。

どのような課題を解決しているのか?

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Founder CEO の Aneesh Varma 氏

さて、信用スコアのアップグレードの仕組みが気になるところだが、その前に、Aire はそもそもどのような課題を解決しているのだろうか?

一言でいうと、既存の信用スコアの理不尽さの解決である。

具体的には、クレジットヒストリーを得るためにはある程度の時間を要するが、そもそもそのために与信枠が必要という理不尽さを解決すべき課題と位置づけている。

既存の信用スコアリングでは、本来融資がされるべき人に対してサービスを提供できていない場合がある。そこを解決するのが Aire というわけだ。

Aire の信用スコアリング方法

では、具体的にどのように解決するのか解説していこう。

Aire では、オンライン上のインタラクティブなインタビュー形式での質問により必要な情報を収集している。

どのようなデータを利用しているのか?

具体的には、以下の3つの項目についての情報を評価している。

  • Finance(財務状況)
  • Lifestyle(ライフスタイル)
  • Profession(専門性)

その中で、一般的なクレジットスコアリングの場合には、基本的に過去の取引履歴を見て評価しているのに対し、Aire ではその人が将来的にこれらの項目においてどうなるかを予測しているという。

将来性の予測については、affordability、stability、financial resilience という評価軸で分析がされる。

単純な取引履歴だけではなく、ライフスタイルや専門性から、今後のその人がしっかりと稼いでいける能力があるのか、また稼ごうという意思を継続できるのか、といったあたりを判断しているのだろう。

インタラクティブインタビュー

Aire のデータ収集手法である「インタラクティブインタビュー」は以下のようなイメージだ。

こちらは職歴(専門性)に関しての質問。

インタラクティブインタビューイメージ①
インタラクティブインタビューイメージ①

こちらはライフスタイルや志向性を問う質問。UIの工夫も見られる。

インタラクティブインタビューイメージ②
インタラクティブインタビューイメージ②

こちらは財務状況に関する質問。

インタラクティブインタビューイメージ③
インタラクティブインタビューイメージ③

このようなユーザーフレンドリーなUIでいくつかの定形質問をすることで、その人の将来的な収益性を予測するわけだ。

今までに生み出した与信枠は100億ドル以上

Aire では、このようなインタラクティブインタビューの機能を様々な金融機関にAPIで提供する形をとっている。

領域としては、クレジットカード、個人融資、自動車ローン等の領域のクライアントとパートナーシップを組んでいる。

そして、実績として、Aire では今までに100億ドル分の与信枠を新たに生み出しているという。

与信受理率では14%のリフトが見られた

さらに、与信の受理率としては、12-14%のリフトが見られている。もちろん貸し倒れの確率を上げることなくに、だ。

このような機械学習による予測モデルでは、データが蓄積されればされるほど予測精度は上昇していく傾向にある。

今後、Aire がさらに様々な金融機関に導入されれば、さらに大きな与信枠が解放され、よりお金が必要としている人の元に届く機会が増えていくことだろう。

イギリスのその他のクレジットスコア系サービス

イギリスのその他のクレジットスコア系サービスでは、既存のクレジットスコアの可視化&レポーティングサービスの「ClearScore」や、Aire と同じく独自の信用スコアリングを行っている「Credit Kudos」がある。

ClearScore については、既にエクスペリアンが買収をしており、既存の大企業が新興のクレジットスコア関連スタートアップを買収し取り込んでいく流れは今後も続きそうだ。

Aire についても、エクスペリアンの投資が今回のラウンドで行われたが、今後の Exit の選択肢として、エクスペリアンへの売却というシナリオもなくはないだろう。

Credit Kudos に関しては、まだシードラウンドのスタートアップ。今後に期待というところだ。

まとめ

本記事では、信用スコアをアップグレードする Aire というスタートアップを紹介してきた。

信用スコアにおいては、中国アントフィナンシャルの「芝麻信用」が有名だが、世界各国で様々な新興サービスが出てきている。

本記事に続いて、各国の信用スコアについてもそれぞれ分析し、全体的な傾向等についても今後お伝えできればと思う。

ぜひ、お楽しみに。

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