米国では、パーソナルローンや住宅ローンを申請すると、FICOスコアと呼ばれる信用スコアを元に与信審査が行われる。
しかし、FICOスコアの算出には、最低6ヶ月のクレジットヒストリーが必要となるため、約4500万人の米国民がスコアを保有できていない。
そして、その結果、通常のローンではなく、不当に高金利なローンに頼らざるを得ない。これは大きな社会課題だ。
この課題を解決するスタートアップのうちの1つが「Aura」だ。Aura では、LaaS(Lending-as-a-Service)モデルで、小売店舗などにレンディングサービスを提供している。
本記事では、そんな Aura の会社概要、ビジネスモデル、これまでの実績について解説していこう。
INSIKT から Aura(オーラ)へ
まずは、Aura の会社概要について解説していこう。
Aura(オーラ)は、2019年2月12日に前身の INSIKT(インシクト)から会社名変更となって誕生した。
INSIKT は、2012年にサンフランシスコで創業されたスタートアップで、2014年よりサービスを展開し始めている。
Aura(INSIKT)は、これまでに総額4.06億ドル(約446億円)を調達している。
その中には、シリーズCで日本から楽天も投資をしている。また、シリーズDでは、サンフランシスコベースのスタートアップとしては珍しく、メキシコの巨大デパート「Grupo Coppel」が投資をしている。
後に解説する Aura のビジネス領域をみると、納得の投資元である。
Aura への社名変更について、創業者CEOの James Gutierrez 氏は、次のように語っている。
Most financial institutions see borrowers as a number, a risk, a reflection of the past. This says nothing about a borrowers’ potential and where they can go. The difference for us -- we see their Aura, not just their credit score. We see them, their potential, and their dreams.
(意訳)ほとんどの金融機関が借り手をただの数字、リスク、過去の反映としか見ていない。それでは、借り手のポテンシャルや未来の可能性について考慮することはできない。私たちとの違いは、私たちは彼らの「オーラ」を見ているんだ。クレジットスコアだけではなくね。彼ら自身を、彼らのポテンシャル、彼らの夢を見ているんだ。
このように、借り手の信用スコアだけではなく、オーラ(将来性や夢など?)を見ることで、融資を行っていくという会社としてのビジョンを会社名にしたわけである。
Auraの仕組み、ビジネスモデル
Aura は、低所得者層向けに「Lendify」と呼ばれるレンディングプラットフォームを提供している。ビジネスモデルとしては、「LaaS(Lensing-as-a-Service)」ということもできる。
具体的には、小売業者などに対して、「彼らが顧客にスモールローンを提供できるサービス」を提供している。
裏側の与信審査や貸付などを Lendify プラットフォームが担うことで、小売業者は店頭で簡単にスモールローンサービスを提供できるようになるわけだ。
消費者からすると、わざわざ金融機関に行かずとも、小売店舗にてローンの申し込みをすることができるという便利なUXが実現されている。
そして、Aura が面白いのは、各事業者による貸付はプールされ「債権」として投資家に販売される仕組みになっているところだ。
ボラティリティによって、A・B・Cの3つの債権に分類され、投資家はそれぞれのリスク・リターンを判断して投資を行うことができる。
上図のように、既存の債権に比べて、ハイパフォーマンスになると Aura 公式サイトでは示されている。
APR は、30%〜60%程で借り入れ金額と返済期間によって変動制となっている。まだまだ高い水準ではあるが、既存のペイデイローンと比べると低い水準である。
Auraは米国内のみでサービス運営されているが、上図のように、英語とスペイン語のフォームが用意されている。これは、ヒスパニック系のユーザーが多いことを示している。
冒頭で、メキシコの巨大デパート企業が投資をしていると述べたが、その理由はここにあったわけだ。
Aura 利用ユーザーの2/3が平均312ポイント信用スコアUP
Aura は、「Credit-building loans(信用構築ローン)」とも呼ばれている。
つまり、Aura を利用することで、信用スコアを持っていない人はスコアを持てるようになり、低スコアの人は高スコアを目指せるというわけだ。
実際に、Aura の利用ユーザーで、最初のローン申請時と2回目のローン申請時で、自身のクレジットスコアは平均で312ポイント上昇していたという。
米国の信用スコア「FICOスコア」は、300〜850点でスコアリングされる。そこで、平均312ポイント上昇するというのは非常に大きな変化である。
Aura はこれまでに、$390M(約430億円)のローンを約32万人に提供している。
まとめ
本記事では、小売業者に対して LaaS を提供する「Aura」について解説をしてきた。
ECにおける後払いローンを提供する Affirm のオフラインバージョンという捉え方もできるかもしれない。
1つ残念だったことに、Aura がどのように信用をスコアリングしているのかについては、全くと言ってよいほど情報が出てこなかった。独自のアルゴリズムではあるらしいが、どのようなデータを利用して将来性やポテンシャルを評価しているのか気になるところである。
また何か分かり次第、情報をアップデートしていきたい。