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グローバルな信用インフラ構築へ、Bloomの思想と信用スコアの仕組み

昨日ご紹介した COLENDI と同じく、ブロックチェーン×クレジットスコアの領域で期待されているサービス「Bloom」を紹介しよう。

Bloom は、2019年2月6日に US AppStore の Utility カテゴリーでTOP10入りを果たすなど、すでにリリースされているアプリでもユーザーのニーズを捉え始めている。

本記事では、その Bloom の概要、解決する課題、提供サービスについて解説していこう。

「信用スコア」について詳しく知りたい方は「信用スコアとは?信用スコアの仕組みやメリット、利用データについて 」をご覧ください。

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Bloom 会社概要

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Bloom は、2017年に米国で創業されたブロックチェーンスタートアップだ。

資金調達については、2017年の12月(ちょうど日本でも仮想通貨バブルが起きていた頃)にICOを実施し、$41,400,000(約45.5億円)を調達している。

Bloom のミッションについては、Forbes のインタビューに対して、Bloom 共同創業者の Daniel Maren 氏が以下のように応えている。

Bloom’s mission is to build a robust global credit infrastructure [that] reduces fees, increases accessibility to credit, and makes credit scoring fair.

(筆者訳)Bloom のミッションは、強固でグローバルな信用のインフラを構築することで、費用を削減し、信用へのアクセシビリティを向上させ、信用スコアリングを公平にすること。

では、そのような信用のインフラをいかに構築しているのか?

Bloom が解決する課題

信用インフラの構築方法について入る前に、Bloom が解決している課題について見ていこう。

彼らが取り組む課題は大きく分けて、3つある。FICOによる信用スコアリングの独占、データ流出の危険性、クロスボーダーで利用できない閉鎖性の3点だ。

FICOによる信用スコアリングの独占

ご存知のかたも多いかもしれないが、米国の信用スコアリングの90%以上は、FICOという企業のスコアリングモデルにより算出されている。

このFICOの信用スコアリングを用いて、”Big Three" と呼ばれる三大信用調査機関である Equifax(エクイファックス)、Transunion(トランスユニオン)、Experian(エクスペリアン)が実際のスコア算出を担っている構造だ。

米国では、事実上、FICOのスコアリングで対象外となってしまったりデータの不足からスコア算出不可となってしまうと、融資を受けることが難しい。そして、そのような人が4000万〜5000万にほど存在している。

これが1つ目の課題だ。

データ流出の危険性

2017年7月、先述の米国三大信用調査機関の1つである「Equifax」が大規模な個人情報流出事件を起こした。

実に、米国の全人口の44%にあたる1億4,300万人もの人々のセンシティブな個人情報が流出してしまったのである。

この流出事件が示すように、価値のあるデータが増えれば増えるほどハッキングのリスクは上昇する。このハッキングリスクをいかに仕組みとして軽減するかは今後さらにに必要性が増してくる問題だ。

クロスボーダーで利用できない閉鎖性

最後に、既存の信用スコアは一国に閉じたものである点だ。

これはわかりやすいが、もし日本に住むあなたが米国へ移住をしたとすると、あなたのクレジットヒストリーは0からのスタートであり、信用スコアの算出すら難しい状態となる。

今後、国を超えたビジネスあるいは生活がより身近になっていくにあたり、このような制約はなくなっていくべきであろう。

Bloom の提供する3つのサービス

では、次に Bloom がいかにこれらの課題を解決しているか解説していこう。

Bloom では、グローバルなIDである「BloomID」、クレジットヒストリーを管理する「BloomIQ」、信用スコアを示す「BloomScore」 という主に3つのサービスを提供している。

Bloomの提供サービスは3つに分類される

3つのサービスが相互に連携し合う形になっている。

Bloomの3つのサービスの関係性

各サービスについて簡単に説明をすると以下のようになる。

BloomID

BloomID は、グローバルで利用できるアイデンティティ(ID)。 このIDを軸に、借り手は、自らのデータを晒すことなく、貸し手からの融資オファーを受けることができる。

BloomIQ

BloomIQは、クレジットヒストリーを管理するシステムである。

現在及び過去の債務をレポート&トラッキングし、スコアリングに活かすことができる。

BloomScore

BloomScoreは、いわゆる信用スコア(クレジットスコア)のこと。ユーザーの返済能力を示す指標として用いられる。

FICOやVantageScoreのアップデート版という位置づけで、購買力や購買頻度、支払いの継続性を元に、既存の信用スコアよりもより各人の信用力を表現できるようにされているという。

BloomCard

BloomCard

さらに、番外編として、BloomCard についても紹介しておこう。 BloomCard は、今後ローンチ予定のサービスで、グローバルなクレジットカードだ。

銀行口座を持たない人も含め、すべての人にオープンなクレジットカードで、このカードによる決済データは BloomScore に反映される仕組みを想定している。

オフラインのデータもスコアリングに取り込んでいこうという意図なのかもしれない。

スコアリングに利用するデータ

Bloom の初期(フェーズ1)の信用スコアリングにおいて、以下のようなデータを利用している。

  • 支払い総額と未払金総額
  • 最長の返済履歴
  • 平均月間支払額
  • 過去のローンの数
  • すべてのレポート情報横断での支払総額

印象としては、そこまで FICO による信用スコアモデリングと変わりなさそうだ。

ただ、フェーズ2として、ステークした Peer の平均スコアが変数として追加されるのは Bloom のユニークな点といえるだろう。

さらに、フェーズ3では、Bloom 上でのトランザクションの実績値もスコアリングに反映されていくようになるという。

なぜブロックチェーンなのか?

最後に、なぜブロックチェーンを活用しているのかについて触れておこう。

まず大きな理由としては、改竄が困難である点が挙げられる。冒頭で Equifax のハッキング事件を紹介したが、ハッキングをされ改竄までされていまったいたら、その人の信用はどのようになってしまうのだろうか?

「信用」というセンシティブで重要なテーマを扱うからこそ、データの改竄耐性は高いにこしたことはなく、そこをブロックチェーンで担保しているというわけだ。

2点目として、管理者である Bloom がデータに触れずにサービス提供を行える点が挙げられる。

一般的に、サービス提供者はデータを自社の中央サーバーに入れて管理をするため、データを見ないと主張をしてもそれを仕組みとして証明することは難しい。

それに対して、ブロックチェーン及びトークンを活用し、自律分散的なシステムを構築することで、管理者自身がデータを管理する必要はなく、ユーザーのローカルストレージにデータは保存し、必要に応じてP2Pでデータの取引を行うといったことも可能になる。

最後に、クロスボーダーで世界中にサービスを展開していくにあたって、ブロックチェーンのようなオープンな仕組みのほうがより好ましいという点も挙げられる。

まとめ

Bloom のグローバルな信用インフラを構築するという思想は非常に面白いし、今後に期待をしたい。

現在 AppStore にある「Bloom」のアプリをみると、Twitter や Facebook などと連携することで、いくつかの個人向け融資企業から融資を受けられるサービスとなっているが、ここから彼らがどのようにスコアリング自体に手を付けていくのか、引き続き注目していきたい。

COLENDI と Bloom のグローバル信用スコア競争という構図でみても、面白いだろう。

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また、Bloom は 19年3月には、25万IDに達し Ethereum ネットワークの2.5%の規模になっているという。今後の動向にも注目だ。

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