※この記事は2019年3月22日に更新しました。
2019年10月、ついに消費税が現行の8%から10%まで引き上げられるとされている。
これは消費者にとっては辛いニュースであるが、一方で、朗報もある。
増税のタイミングで「キャッシュレス決済を利用すると2〜5%ポイント還元」になる制度の整備が進められているのだ。
本記事では、ポイント還元の詳細な条件と、今回このような政策が進んでいる背景について解説していこう。
2〜5%のポイント還元の条件は?
実際に2〜5%のポイント還元の条件についてみていこう。
決済手段によって対象か非対象かが分かれており、さらに店舗や業態によってポイント還元率が異なる仕組みだ。
対象の決済手段
ポイント還元の対象となる決済手段は以下の通りだ。
- クレジットカード
- Yahoo! JAPANカードやリクルートカード
等のポイント還元機能付きのもの。
- Yahoo! JAPANカードやリクルートカード
- 電子マネー
- Suica も電子マネーに含まれるがポイント還元機能がないため、nanaco、WAON、iD といったカードが対象となると考えられる。
- QRコード決済
- LINE Pay、PayPay、Origami Pay、楽天ペイなど。新規サービス含め2018年より盛り上がってきている。
まずクレジットカードは揃えつつ、QRコード決済のみの対応店舗も想定して、QRコード決済のアプリも用意するとよいだろう。
具体的なポイント還元の対象サービスについては、以下の記事に最新情報をまとめているので、ぜひ参考にしていただきたい。
誰がポイント分のお金を負担するのか?
2〜5%のポイント還元については、政府が負担することになっている。
具体的には、政府がクレジットカード会社やQRコード決済の会社にポイント分のお金を支払うことになる。
店舗ごとのポイント還元率
店舗(一部商品カテゴリ)毎で、還元率は以下のような形で検討されている。
還元率 | 対象店舗 |
---|---|
5% | 中小小売、飲食、宿泊 |
2% | コンビニ、外食、ガソリンスタンド、大手系列のチェーン店 |
なし | 百貨店などの大企業、一部の除外業種(病院/住宅/自動車)、食料品(消費税増額対象ではないため) |
小売店舗については、中小事業者のみ5%となっており、ここでいう中小事業者の定義としては「資本金5,000万円以下または従業員50人以下」が当てはまると考えられている。
なかなか複雑でこれが生活者にすんなりと理解されるかというと少し不安が残る内容だ。
還元額の上限はあるのか?
キャッシュレス決済による還元額に「上限」はあるのだろうか?
こちらについては、2019年2月20日現在、経済産業省にて何らかの仕組みを検討中のようだ1。
経済産業大臣の世耕氏曰く、「セキュリティーの観点から何らかの一定の上限ルールを設けてもらうよう、予算の執行にあたって各決済事業者と話し合っていきたい」とのこと。
ただ、各サービスによって上限額の有無も異なれば、その上限額についても異なっているため、制度の設計はなかなか難航しそうだ。
不正利用に対する対策として、上限額は必要となってくる。今後の動きにも注目である。
店舗としてどのような対応が必要になる?
店舗としては、キャッシュレス決済への対応が必要となってくる。
ポイント還元については9ヶ月のみの期間限定となるが、長期的な視点にたった場合にも、キャッシュレス決済対応による消費機会の拡大は十分にあるだろう。
クレジットカードや電子マネーに対応をするのであれば、安価に導入ができ操作性も直感的で分かりやすい Square や AirPAY
といったタブレット端末を活用したPOSレジシステムを導入するのがよいだろう。
また、QRコード決済のみであれば、さらに簡単に導入することができる。
QRコード決済サービス各社は、手数料の無料キャンペーン等、お得なキャンペーンも行っているため、当面はマイナス面を考えずに利用することができる。
たとえば、LINE Pay では、2018年8月1日から2021年7月31日までの3年間決済手数料無料のキャンペーンを行っている。
また、ソフトバンクとヤフーの合弁会社が提供する PayPay(ペイペイ)については、決済手数料はサービス開始から3年間無料、さらに初期導入日と入金手数料も無料という大盤振る舞いだ。
さらに、POSレジを導入する際にも、その一部を政府が負担するという案も出てきている。店舗側としては、このタイミングをうまく利用できるとよいだろう。
最近では、「完全キャッシュレス店舗」も出てきており、参考になるだろう。
キャッシュレス決済によるポイント還元の背景は?
では、「なぜキャッシュレス決済によって2〜5%のポイント還元がされようとしているのか」、その背景についても解説していこう。
以下の2点がポイントである。
- 増税による消費低迷への懸念
- キャッシュレス推進の必要性
2019年10月より、消費税が現行の8%から10%へ2%上昇する(食料品は8%で据え置き)ことになっている。
しかし、当然のことながら、増税による消費の落ち込みが懸念されている。
というのも、2014年4月の増税時(5%から8%)の「苦い経験」があるからだ。
以下のみずほ総合研究所の図が示すように、増税前の駆け込み需要で高まった消費は増税のタイミングで急降下し、その後も、実質所得の減少効果、及び体感物価の上昇による節約志向効果によって、消費は伸び悩んだのだ2。
一方で、キャッシュレス決済に話をうつすと、日本におけるキャッシュレス決済の比率は、2017年末時点で21.3%と低い水準だ。
これに対して、内閣官房⽇本経済再⽣総合事務局が発表した未来投資戦略2017の中では「27年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指す」と言及をしている3。
また、キャッシュレス決済の導入により、外国人観光客の消費の機会損失が軽減されることも期待されている。
そのため、2020年の東京オリンピックで海外からの観光客が大勢訪れるタイミングまでに、なんとかキャッシュレス決済対応店舗を増やしていきたいという思惑もある。
このように、「増税による消費低迷への懸念」と「キャッシュレス推進の必要性」という2つの条件が結びつき、増税時のキャッスレス決済によるポイント還元という政策に結びついたわけだ。
まとめ
本記事では、消費税増税時の景気対策として検討されているキャッシュレス決済ポイント還元について、その背景と条件について詳細に解説してきた。
政府の考えるこの施策、消費者や店舗にとってはメリットの多いものとなりそうだ。
しかし、ポイントを還元するクレジットカード会社やQRコード決済会社にとってはいかがなものだろうか?
決済数が増えることによる手数料の増収については期待できるだろう。
ただ、店舗ごとに応じてポイント還元率を変更するためには既存システムから改修が必要となるため、9ヶ月間という特別機関のために実施するとなると「見合わない」という声もある。
キャッシュレス決済を広めるという意図があるならば、消費者にとっても、決済会社にとっても、よりシンプルで分かりやすい制度設計が必要となるのでは、と考えさせられた。
関連書籍
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