「信用」は2019年、ホットなテーマとなりそうだ。
ドコモ・ヤフー・LINEといった大手企業の信用スコア市場への参入、シェアリングエコノミーに代表される新たな取引形態の普及もその流れを後押ししている。
本記事では、そんな「信用」について学ぶ上で、おすすめの書籍をご紹介していこう。どれも内容が濃いめの本なので、GWの時間がとれるうちにぜひ読んでみてほしい。
- アントフィナンシャル 一匹のアリがつくる新金融エコシステム
- 信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来
- TRUST 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか
- 限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
- 番外編:負債論 貨幣と暴力の5000年
- まとめ
アントフィナンシャル 一匹のアリがつくる新金融エコシステム
まずは、『アントフィナンシャル 一匹のアリがつくる新金融エコシステム』という書籍。
これは、中国アリババ系列でフィンテック領域のサービスを展開するアントフィナンシャルに焦点を当てた本だ。
その中では、中国で普及する信用スコア「芝麻信用」についても50ページ近く記載されている。今出版されている書籍の中で、「芝麻信用」について最も詳しく記述があることは間違いない。
「芝麻信用」は、これからの信用の形を考える上で、まず外せないサービスなので、本書を参考にチェックしてみてほしい。

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
- 作者: 廉薇,辺慧,蘇向輝,曹鵬程,永井麻生子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2019/01/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
まずは、記事で「芝麻信用」について学びたいという方はこちら。
信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来
2冊目は『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来』という書籍。その名のとおり、ブロックチェーンによる新たな信用の形についての内容となっている。
個人的に面白かったのは、後述の『負債論』の考えをベースに、信用の歴史的変遷について解説しているところ。
改めてブロックチェーンによる中央管理者を必要とせずにみんなで「信用」を担保するという方法について、見つめ直すきっかけになる本だ。

信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来 (NextPublishing)
- 作者: 斉藤賢爾
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2017/12/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
TRUST 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか
3冊目は、レイチェル・ボッツマン氏による『TRUST 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか』という書籍をご紹介しよう。
TRUST は、一言でいうと、これまでの企業や政府や大手メディアなどの権力を信頼する時代から、口コミやレビューやスコアリングのようなテクノロジーによる分散された信頼の時代への変遷を説いている。
著者のレイチェル・ボッツマン氏は、『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』を執筆したことでも有名。シェアリングエコノミーを中心としたこれからの世の中と、その中での信用の新たな形について考えるのに適した良書だ。
1冊目の『アントフィナンシャル』でもご紹介した「芝麻信用」についての記載もある。

- 作者: レイチェル・ボッツマン,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2018/07/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
本書では、ケニアで信用革命を起こしたローンサービス「Tala」についても紹介されている。
限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
4冊目は、『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』だ。
「信用へのアクセス」の重要性が増してくる背景として、この本で主張されている「限界費用ゼロ社会」について理解を深めておきたいところだ。
様々な社会インフラや取引の限界費用がゼロに近づくことで、P2Pの取引、C2Cサービスはこれからさらに増えてくる。その中で、お互いにどのように信用するかという問題が出てくる。
「信用」は金融領域のローンに利用されるだけでなく、人と人との取引全てにおいて必要になる重要な要素というわけだ。
500ページを超す大作なので、お時間のあるときにぜひに。

限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭
- 作者: ジェレミー・リフキン,柴田裕之
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/10/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
番外編:負債論 貨幣と暴力の5000年
最後に5冊目は、『負債論 貨幣と暴力の5000年』。
これは私もまだ読めていないのだが、最近の信用に関する様々な本が引用あるいはベースにしているような「信用の本質を問う本」だ。
「貨幣の成り立ちは、物々交換ではなく、負債にあった」というこれまでの常識を覆す論を展開し、世界的ベストセラーとなっている。
『21世紀の資本論』とも言われている。800ページを超す超大作だが、長期休暇だからこそ読んでみたい一冊だ。

- 作者: デヴィッド・グレーバー,酒井隆史,高祖岩三郎,佐々木夏子
- 出版社/メーカー: 以文社
- 発売日: 2016/11/22
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
まとめ
「信用」について考え始めると、歴史あるいは海外の先進事例から学ぶことが非常に多い。
歴史では、近代化以前の信用の形から、近代化を経て、今次のフェーズへ移行しようとしていることがわかる。また、海外の先進事例からは、日本とは状況が異なるとはいえ、その成功と失敗から、日本におけるサービスのあり方がなんとなくみえてくる。
ここで上げた5冊をはじめとして、ぜひ一緒に「これからの信用」について考えていけたら嬉しい。