Credit Karma というサービスをご存知だろうか?
日本ではあまり知られていないが、米国では、ミレニアル世代を中心に8500万人以上が利用しているサービスだ。
2018年5月には、40億ドル(約4,400億円)のバリュエーションをつけ、堂々のユニコーンクラブ入りを果たしている。
本記事では、そんな Credit Karma の事業内容とビジネスモデル、そして彼らの今後の戦略である「金融プラットフォーム構想」について迫っていこう。
Credit Karma(クレジットカルマ)の会社概要
まず、Credit Karam(クレジットカルマ)という会社について、簡単に解説していこう。
Credit Karma は、2007年にサンフランシスコで設立されたスタートアップだ。
これまでに、8.68億ドル(約954億円)を調達し、40億ドル(約4,400億円)のバリュエーションが付いているユニコーン企業である。
ユーザー数は、19年1月時点で8,500万人に登り、そのうちの半数はミレニアル世代だという。
売上についても、2016年時点で5億ドル(約550億円)に達しており、そこから毎年二桁%以上の成長をしている。
1サービスでここまで数字を伸ばせているのには、驚きである。
Credit Karma の主要サービス
では、Credit Karma はこれだけの数字をどのようなサービスで作りあげているのだろうか?
簡単にいうと、「信用スコアの無料モニタリングサービス」である。
Credit Karma では、TransUnion と Equifax という米国3大信用調査機関のうちの2社と連携することで、ユーザーの信用スコアをアプリ上で確認できるようにしている。
ユーザーは、各信用調査機関のサイト上で信用スコアを確認することはできるものの、UXが悪く面倒なため、Credit Karma 上で簡単にチェックできることが価値につながっている。
また、スコアが変動した際にアラート通知をしてくれるのも便利な機能だ。
さらに、信用スコアレポートを分析して、スコアを向上させるための Tips を提供してくれるのも便利な機能のうちの1つだ。
そして、これらが全て無料で提供されるため、信用スコアを維持しておきたい人やスコアを上げたい人におっては、至れり尽くせりなサービスなわけである。
Credit Karma のビジネスモデル
さて、信用スコアモニタリングのサービスを「無料」で提供している Credit karma が、数百億円もの売上をあげられているのはなぜだろうか?
Credit Karma のビジネスモデルは、一言でいえば「広告ビジネス」だ。
信用スコアレポートのデータを元に、関連する金融商品のレコメンドを行っているわけだ。
レコメンドする商品としては、クレジットカード、パーソナルローン・住宅ローン・自動車ローン・学生ローンなどの各種ローン、保険というように、幅広い。
下図のように、いわゆる「比較サイト」のように各商品を比較できる検索機能もついている。
このビジネスモデルについて、CEOのLin氏は以下のように言っている。
“If you take advantage of that opportunity, we should make money, you should save money, and the bank should get a new customer, the loser in the equation was that bank that was charging too much.”
もしあなた(ユーザー)がこの機会を利用すれば、私たち(Credit Karma)は収益を上げることができ、あなたたちは節約することができ、銀行は新たなカスタマーを手に入れることができる。この方程式における敗者は、お金を過度に請求している銀行だ。
このように、信用スコアレポートのデータを元に、ユーザーにとって本当に良い商品をレコメンドすることで、全てのステークホルダーにとってメリットのあるビジネスモデルを構築しているわけだ。
金融プラットフォームを目指す未来像
Credit Karma は今後、「金融領域におけるプラットフォーム」を志向していくようだ。
CB Insights のインタビューによると1、「数百万ものデータポイントを処理することで、ユーザーに対して最もおトクな金融商品をリアルタイムに提供できる」ようなデジタルアシスタントを目指しているという。
これは今後10年間ほどの未来について語っている。
そして、このような将来像に向けて、Credit karma は実際に動き出している。
面白い動きとしては、「Penny」というチャットボット型のPFMサービスを買収し2、チャットボットによるコミュニケーションを取り入れたり、「Approved」という住宅ローンのモダナイズを掲げるスタートアップを買収し、住宅ローンの領域に参入をしていたりする3。
おそらく今後も、Approved の買収のように金融商品の出口をさらに拡充していく動きは加速し、Penny のチャットボットのようにユーザーの接点部分における工夫にもさらに力を入れていくのだろう。
あとは、「数百万ものデータポイント」をどのように集めるのかが注目なところである。Penny は PFM サービスのため、Penny による収集するというのは1つの手段だとはいえ、mint に代表されるような王道のPFMサービスの買収も画策しているのかもしれない。
Credit Karma の買収企業についてのまとめはこちら。 www.dappsway.com
まとめ
本記事では、Credit Karma(クレジットカルマ)の事業概要と今後の戦略について、解説をしてきた。
米国では、FICOスコアという信用スコアがシェアの9割を占め、いくつかのライフイベントの際には大きな役割を果たしている。
日本では、まだFICOスコアのような一般に普及している信用スコアは存在しないため、Credit Karma のようなビジネスのニーズは今のところはない。
今後、日本でも信用スコアが普及した未来において、日本版 Credit Karma の必要性も出てくることだろう。