インドでは、4つの信用情報機関(CIC)が信用スコアを提供している。
しかし、信用情報機関のスコアリングにはクレジットヒストリーが必要という制約があるため、信用情報機関のスコアでカバーできるのはインド全国民の22%のみであるという。
そこで、クレジットヒストリー以外のデータを用いて信用をスコアリングしようというスタートアップがいくつか出てきている。
そのうちの1つが「CreditVidya(クレジットヴィディヤ)」だ。
本記事では、CreditVidya の会社概要と仕組み、提供ソリューションについて解説していこう。
CreditVidya(クレジットヴィディヤ)の会社概要
CreditVidya(クレジットヴィディヤ)は、2012年にインドのムンバイに設立されたスタートアップだ。
これまでに、1000万ドル(約11億円)を調達している。
世界銀行のデータによると、インドで信用機関が信用スコアを提供できているのは全国民のわずか22%だという。
CreditVidya では、この課題に対して、新たなデータとビッグデータ解析技術により「CV SCORE」という独自の信用スコアを算出することで、解決を図っている。
創業者は、Abhishek Agarwal 氏と Rajiv Raj 氏の二人。Raj 氏は、インド最大の信用情報機関「CIBIL」の創業メンバーの一人だ。CIBIL のクレジットヒストリーによる信用スコアリングの限界を知る人物でもあるわけだ。
CreditVidya の信用スコア「CV SCORE」の仕組み
CreditVidya では、「CV SCORE」という信用スコア(クレジットスコア)を提供している。
この「CV SCORE」を金融機関へ提供することで、収益を上げるビジネスモデルだ。
金融機関はスコアを元に、今までの信用スコアでは判断できなかった人々への融資も判断できるようになる。言い換えれば、融資対象の幅を広げることができる。
では、Credit Vidya では、どのようなデータを利用してスコアリングを実現しているのだろうか?
具体的には、以下のデータを利用していると公表している。
- 取引データ(Eコマースの購買データ等)
- 通話データ
- ソーシャルネットワークのデータ
- 位置データ
- 行動データ(WEBサイトの訪問履歴)
たとえば、通話データにおいては、「一人で行動する傾向の高い人」と「社会的なつながりの多い人」では、前者のほうがデフォルト率が高いといった結果が出ているという。
このような、新たなデータを利用することで、クレジットヒストリーが不足しているために信用力の判断が難しかった人々に対してもスコアリングが可能になっている。
通話データによる信用スコアリングという点では、Talaの事例も参考になる。
雇用時のフラウドチェックサービス「EVE」への応用
CreditVidya のビッグデータ解析技術は、個人向け融資の信用スコア以外へも利用されている。
そのうちの1つが、雇用時のフラウドチェックサービス「EVE」だ。
EVE では、経歴詐称などのフラウドを自動でチェックすることができる。これにより、雇用側はリスクを軽減できるし、採用候補者側もオフィス訪問の工数などを省くことができる。
また、EコマースやFinTechサービスにおける新規ユーザーのフラウド検知への利用も広がっているという。
However, recently there are demands from e-commerce and wallet companies, which are looking at our product for credit risk for their new customers,
共同創業者の Abhishek 氏
ID単位で信用を測ることは、裏返せば、フラウドユーザーの検知にもつながる。これは、信用スコア提供企業のビジネス展開として、これから増えてくるかもしれない。
日本では、インティメート・マージャーの信用スコアがこの領域のサービスである。
まとめ
本記事では、CreditVidya の会社概要、仕組み、提供ソリューションについて解説をしてきた。
CreditVidya の信用スコア「CV SCORE」自体は、新興の信用スコアとしては一般的なものであった。一方で、信用スコアから派生した「EVE」のようなサービスは、新たな展開手法として注目したい。
CreditVidya のユーザー数や貸付額などの具体データは今のところ見当たらなかったが、既存の信用情報機関に対して、どのような数値感なのか気になるところである。
今後も注目していきたい。