クラウドワークスは中期経営方針1として「働き方革命」を掲げ、個人が主役の時代に合わせたサービスの拡充を発表している。
そのうちの1つが、クラウドワークスによる信用スコア「クラウドスコア」である。
同社は、2017年時点でいち早く信用スコアリングへの参入を発表し、すでにサービスリリースを果たしている。
本記事では、そんなクラウドワークスの「クラウドスコア」の詳細、そして同社のフィンテック領域の戦略について迫っていきたい。
- クラウドワークスとは?
- クラウドスコアとは?
- クラウドスコアの利用データは?
- データの活用先としての「クラウドキャッシュ」
- 信用スコアが上がれば取引がしやすくなる
- ウォレットアプリによる出口データの取得
- まとめ
クラウドワークスとは?
まず、クラウドスコアを提供する企業であるクラウドワークスについて、簡単に解説しよう。
ご存知の方も多いと思うが、クラウドワークスは、同名のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を提供している企業だ。
2011年の設立で、2014年にはマザーズへの上場を果たしている。
同社のビジョンは、「世界で最もたくさんの人に報酬を届ける会社になる」こと。
日本一のオンライン就業インフラを目指し、インターネットを通じた人材の適切なマッチングにより労働市場をアップデートしようという狙いがある。
そして、中期経営方針として「働き方改革」を定め、そのコアバリューとして「クラウドスコア」が位置づけられている。
クラウドスコアとは?
そのクラウドスコアとはどのようなものなのだろうか?
以下の図が分かりやすくクラウドスコアの概要を表している。
このように、クラウドスコアとは、クラウドワークスグループの利用データやSNSのデータを元に、個人の信用力を測るスコアとして「クラウドスコア」を算出し、そのスコアを融資やその他の様々なサービスに活かしていくというものである。
ユニークな点としては、クラウドワークスグループの利用データをスコアリングに用いている点で、仕事の実績や仕事の評価などを参照することで、その人の信用力を判断するというのは、今までできていなかったが実感値としても信用力を測る上で効果がありそうだ。
また、低い評価をもらってしまうとスコアが下がってしまうという状況は、クラウドワークス内での納品やコミュニケーションの質の向上を促すようなインセンティブにもなっていくかもしれない。
クラウドスコアの利用データは?
クラウドスコアの利用データとしては、以下のような項目が挙げられる。
- クラウドワークスグループ各サービス
- クラウドワークス:国内最大級のクラウドソーシングサービス
- クラウドテック:業務委託やフリーランスの求人情報
- BIZ ASSISTANT ONLINE:クラウドソーシングの仲介
WOW!me(ワオミー):スキル売買サービス(2018年12月サービス終了)- BRAIN PARTNER:企業と課題解決のスペシャリストのマッチング
- 3スタ:週3日からのウェブクリエイター向け求人
- SNS
さらに、今後これら以外のデータソースも追加されていく予定だという。
SNSのデータを利用したスコアリングというと「Klout」などのサービスが懐かしいところだ。
データの活用先としての「クラウドキャッシュ」
では、データの活用先としては何があるのだろうか?
現在すでにリリースされているものでは、「クラウドキャッシュ」という融資(レンディング)サービスがある。
クラウドキャッシュは、一言でいうと、「報酬を仕事の完了前に受け取ることができるサービス」である。
貸金業の資格を持つCAMPFIRE社との事業提携により、CAMPFIRE社の与信モデル「CAMPFIREレンディング」を採用している。
こちらのサービスでは、あくまでも融資のため、金利(年8〜15%)や上限金額(最大200万円)が設けられている。
そして、その先払いの可否や年利、上限金額の決定の部分において、通常の信用情報に加えて、クラウドワークスの信用スコア「クラウドスコア」が利用されている、という仕組みだ。
一般的に、大企業に属する会社員に対して、フリーランサーは銀行の与信審査などで不利な条件を提示されることが多い。既存の与信アルゴリズムは、安定した企業で継続的な収入があることを見ているためだ。
しかし、今の時代、フリーランサーのような働き方も徐々に増えており、彼らを適切に評価する必要性が出てきている。
そのような中で、クラウドワークスの「クラウドスコア」によって、そのようなフリーランサーの方についても正当な評価を与えることができるようになることには、大きな価値があるというわけだ。
信用スコアが上がれば取引がしやすくなる
さらに、「クラウドスコア」の活用先として、純粋に個人としての信用力が上がることで仕事の取引がしやすくなるという仕事面での利点もある。
これまでも、お仕事を依頼する際には、その人が今まで担当してきた案件を見て判断を下すという手動オペレーションが発生していた。
それを「信用スコア」という指標を用いることで、共通指標として分かりやすい基準ができ、わざわざその人の詳細について細かく調べる必要がなくなる。
このように、より「なめらか」な取引が可能になるという点で、市場をさらに拡大していく上で大きなインパクトがあるといえるだろう。
ウォレットアプリによる出口データの取得
さらに、クラウドワークスでは、2018年5月に、三菱UFJフィナンシャルグループの Japan Digital Design(以下、JDD)との合弁により、株式会社クラウドマネーを設立した。
この連携により、同社はウォレットアプリの開発を進めていくようだ。
クラウドワークスCOOの成田氏によると、このウォレットアプリの狙いは、出口データの取得にある。
お金の『入りと出』を中心に考えてます。今、クラウドワークスを通じて働いている方々が年間100億円近い『入り』を作っているのですが、一方で『出』の方は実態が把握できません。いつどこで何を買ってそれがどういう行動様式になるのか。ここを理解するために用意するのがクラウドマネーで準備中のウォレットサービスになります。
人がスコアで可視化される世界ーー評価する手法、その可能性をクラウドワークスに聞く - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
このように、ウォレットアプリの普及により、世の中の行動様式・消費動向をさらに掴んでいこうというわけだ。
信用スコアの精度をあげていくためには、このような出口側のデータも不可欠となる。クラウドワークスでは、しっかりとその出口のデータについてもウォレットアプリを通して収集しようとしており、強かさが伺える。
まとめ
本記事では、クラウドワークスさんの「クラウドスコア」について整理してみた。
クラウドソーシングのサービスから、個人をさらにエンパワーメントしていくために金融領域への挑戦をしていくというストーリーは非常に惹かれるものであった。
今後、シェアリング領域では個人のスコアリング、信用スコアがさらに注目されてくるはずだ。
クラウドワークスさんの信用スコア「クラウドスコア」の動向に今後も注目していきたい。
↓「信用スコア」全般について知りたいという方はこちらの記事をご覧ください。