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プラットフォーマー規制法案 データポータビリティの実現なるか?

プラットフォーマー規制法案 データポータビリティの実現なるか?

グーグルやアマゾンを中心としたデジタルプラットフォーマーへの規制のあり方についての議論が活発化している。

経産省、総務省、公正取引委員会による「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」では、「データの移転・開放等のあり方」についての議論もされている。

19年4月24日には、これまでの議論をまとめたドキュメントが公開された。

デジタルプラットフォーマー規制のこれからの方向性やデータポータビリティについて知る上で有用なドキュメントのため、その内容をご紹介していこう。

デジタルプラットフォーマー規制の背景

なぜデジタルプラットフォーマーを規制する必要があるのだろうか?まずは、その背景について整理していこう。

近年、パーソナルデータを中心とするデータがデジタルプラットフォーマーに集積されていることは周知の事実だ。たとえば、Google は膨大な検索データやEメールのデータを保有しているし、Amazonは大量の購買データを保有している。

これらのデータは、各社の中で利活用されることで、レコメンド精度の向上などのサービス改善に役立っている。

一方で、社会全体でみた際には、以下のような負の側面も浮かび上がってくる。

  • データの囲い込みにより競争が制限される恐れ
  • データが持つ価値が最大限に活かされない可能性
  • 利用者の選択の機会が確保されないおそれ

これらの負の側面に対する施策として、デジタルプラットフォーマー規制が検討されているという背景だ。

ちなみに、「独占禁止法で規制すればよいのでは?」という疑問もあるかもしれないが、データの蓄積や当該データを他サービスへ提供しないことが直接的に独占禁止法違法になるわけではいため、現状では難しい。

また、独占禁止法は、基本的に「事後規制」のため、負の側面が表面的になった際に規制を行っていくためのものとなる。そのため、今回のような未然防止や事前規制が求められる領域においては不適切だ。

このような背景のもと、プラットフォーマー規制の新法が検討されている。

データ移転の3つの方法

データ移転の方法としては、以下の3つの手法が検討されている。

データ移転の3つの方法
データ移転の3つの方法

  • データの開示(ダウンロード)
  • データの直接移転
  • データへのアクセス(API開放)

これら3つの手法に関しては、今すぐに1つの方法を定めるのではなく、利用者の利便性や事業者の負担等も考慮の上、検討されていく。

必ずしも具体的な手法をあらかじめ特定することなく、利用者が何らかの方法により、自己に関するデータを再利用できるようにすることが肝要である。

(出典:データの移転・開放等の在り方に関するオプション(案) P.7 )

このように、利用者が自らのデータを再利用できるようにすることが第一に掲げられている。

規制対象となる事業者

規制の対象となる事業者についての議論もされている。

基本的には、すべての事業者を対象にするのではなく、競争の促進のために必要な場合に限定する方針だ。

すべての事業者に対して規制を行った場合には、事業への投資に対する負のインセンティブやイノベーションへの悪影響が考えられるため、上記の方針となっている。

「限定」の手法としては、多様性や変化が激しい市場を考慮して、一義的な数字による判断ではなく、総合的に捉えていく方針だ。具体的には、以下のような評価項目が検討されている。

  • デジタル・プラットフォーマーの市場支配力の観点(例えば、利用者数(アカウント数)、売上高、保有する情報の種類・内容)

  • デジタル・プラットフォーマーによる利用者のロックインの程度の観点(例えば、スイッチングコストの大きさ、他の事業者への自主的なデータの移転・開放の取組の状況)

  • 変化が著しい市場であるため、柔軟かつ迅速に対応できる仕組みを作るという観点(例えば、諸外国の状況や事業者の動向)

(出典:データの移転・開放等の在り方に関するオプション(案) P.9 )

どれだけ独占的になっているか、ロックイン(囲い込み)が進行しているか、また海外の動向等により、総合的に判断していく方針だ。

規制対象となるデータ

また、規制対象の事業者を限定するのと同様に、規制対象となるデータについても限定していく方針だ。

こちらについても、以下のような基準で「総合的」に判断を行っていく。

  • その(サービスに係る)データの移転・開放を認めることで、そのデータを活用したサービス等の競争の活性化が見込まれるもの(例えば、当該データの不可欠性や代替不可能性等の観点)

  • その(サービスに係る)データの移転・開放を認めることで、利用者に他の選択肢が提供されることとなり、プライバシーの保護やセキュリティ確保等も考慮したサービスの質の競争の活性化が見込まれるもの

(出典:データの移転・開放等の在り方に関するオプション(案) P.10 )

太線で示したように、「サービス間の競争活性化」がテーマとなっていることが分かる。

データの開放により、サービス間の競争が活性化し、さらに良いサービスの誕生やサービスの質の向上が期待されている。

データの相互運用性の確保が不可欠

また、データの移転を行った上で、そのデータがきちんと移転先企業で利活用されるためには、「データの相互運用性(Interoperability)」の確保不可欠だ。

データの相互運用性とは、データの移転先において十分にそのデータが利活用されるかどうかを示す言葉だ。

データの相互運用性を確保するためには、データ形式の標準化等が必要となってくる。

この点については、民間団体による標準の策定を促すとともに、第三者がデータの変換プログラムを作ることができるように移転するデータの形式の規格を公開することが検討されている。

プラットフォーマー規制を実施する上での留意点

なお、プラットフォーマー規制、データポータビリティの実現をしていく上での留意点についても記載されている。

  • サービス向上のための投資インセンティブを失わないようにする
  • データの移転・解放に伴う負担が大きくなった結果、既存サービスの提供中止等が生じるような過度に重い義務とならないようにする

このように、過度な規制により結果的に利用者の利便性が下がってしまうようなことがないように配慮されている。

日本では過度な規制の結果イノベーションが阻害されているといった言説も目にするが、そのような状況にはならないことを期待したい。

法案化に向けた今後のスケジュール

法案化に向けたスケジュールは、以下の通り。

  • 19年3月:規制の方向性議論開始
  • 19年4月:報告書公表
  • 19年6月:規制強化の方針を成長戦略に盛り込む
  • 19年夏以降:専門組織立ち上げと具体策の検討
  • 20年夏以降:通常国会に法案を順次提出

19年3月から本格的な動きがはじまり、2020年の夏以降の法案提出に向けて今後も進めていく予定になっている。

さいごに

本記事では、デジタルプラットフォーマー規制法案のオプション案の内容について、ご紹介してきた。

全17ページほどで、詳細に説明されているので、さらに興味がある方はぜひ読んでみてほしい。

データの移転・開放等の在り方に関するオプション(案)

データポータビリティは、2020年の個人情報保護法の改正では盛り込まれない方針だが、このような新法で実現されていくのかもしれない。

留意点にあったように、イノベーション阻害要因にはならない範囲で、サービス活性化の目的が達成されることに期待したい。