※この記事は、2019年3月19日に更新しました。
2018年10月に、ついにNTTドコモも信用スコア(クレジットスコア)事業への参入を発表した。
国内では、ソフトバンクとみずほ銀行のJスコア、ヤフー、メルカリ/メルペイに次いでの参入表明となる(その後、同年11月に参入を発表)。
本記事では、ドコモの信用スコア「ドコモスコアリング」及び、その上位概念に当たる「ドコモレンディングプラットフォーム」について、情報の整理とそれを踏まえてその戦略について考察していきたい。
「信用スコア」について詳しく知りたい方は「信用スコアとは?信用スコアの仕組みやメリット、利用データについて」をご覧ください。
ドコモスコアリングの概要
まず、「ドコモスコアリング」及び「ドコモレンディングプラットフォーム」について解説していこう。
ドコモは、報道資料にて、金融機関向けの「ドコモレンディングプラットフォーム」を提供していくと発表をしている。
「ドコモレンディングプラットフォーム」の主な特徴は3点ある。そのうちの1つが信用スコアの「ドコモスコアリング」であり、残りの2つは「レンディングマネージャー」というアプリ、そして「ドコモが提供する各種サービスとの連携」という内容になっている。
それぞれについて簡単に内容をみていこう。
ドコモスコアリング
ドコモスコアリングは、いわゆる信用スコア(クレジットスコア)のことだ。ドコモ版信用スコアといえるだろう。
ドコモの各種サービスの利用状況などの大量のデータを解析することで、自動的にスコアを算出し金融機関等の提供していく仕組みだ。
レンディングマネージャー
レンディングマネージャーは、ドコモスコアリングを活用した融資サービスを利用する人向けのスマートフォンアプリだ。
アプリ内で、借り入れから返済までの全ての手続を行うことができる。さらに、家計と借入状況を可視化することで、最適な返済計画のアドバイスまでしれくれる。
レンディングマネージャーのアプリについては、国内No.1家計簿アプリを提供するマネーフォワードとの提携により開発される。
そのことから、おそらくマネーフォワードアプリと同じような仕組みで、様々なデータソースと連携することで家計の可視化をし、返済計画のアドバイスまでつなげていくような仕組みなのだろう。
ドコモが提供する各種サービスとの連携
こちらは付随的なサービスという印象だが、ドコモスコアリングを利用して実際に融資を受ける際に、dアカウントやドコモ口座と連携がされていることで、スムーズな入金が可能になるといった内容だ。
例えば、ドコモのバーチャルウォレットサービスであるドコモ口座と連携し、金融機関がお客さまのドコモ口座にご融資金を24時間365日、いつでも入金することができます。
報道資料でもこのように触れられており1、ドコモ口座を保有している人にとっては、24時間365日入金が可能というのは大きなメリットなるだろう。
ドコモスコアリングの利用データは?
さて、ドコモの信用スコアでは実際にどのようなデータを利用していくのだろうか?
報道資料内には「ドコモの各種サービスの利用状況などのビッグデータ」という記載があり、さらに資料内の挿絵を見ると具体的には以下のようなデータを利用していくようだ。
- ドコモ回線の利用期間
- 携帯料金支払履歴
- 金融サービス利用状況
- コンテンツサービス利用状況
- 契約内容
「金融サービス利用状況」という項目だけ曖昧性が残るが、こちらは「ドコモ口座」や「d払い」の利用状況のことだろうか。
他の項目については、分かりやすく、これまできちんと携帯電話の支払いを滞納なくしてきた人は信用度が高いというシンプルなスコアリングとなりそうだ。
ドコモスコアリングの提供先は?
ドコモスコアリングの提供先としては、最初のパートナーとして新生銀行が名乗りをあげている。
今後は、新生銀行以外にも、様々な金融機関に提携先を拡大していく予定だ。
新生銀行はこれまでもキャッシングカードローンのレイクで個人融資を行ってきたノウハウがある。今回、今までの社内での与信ノウハウに加えて、ドコモスコアリングのデータを用いることで、どのような新しい融資を行っていくのか、注目したい。
新生銀行によるドコモスコアリングを利用した融資サービスは、2019年3月開始予定。どのようなサービスとなるか楽しみだ。
(2019年4月9日現在、リリースされている様子はないため、遅延している模様。)
ちなみに、新生銀行のグループ会社「セカンドサイト」では独自の信用スコア「SXスコア」をリリースしている。
この「SXスコア」とどのように併用していくのかにも注目である。
NTTドコモ社としての背景
さて、NTTドコモ社として、信用スコアの領域に参入する背景には、どのような事情があるのだろうか?
その1つには、非通信分野での成長をさらに加速させていきたい、あるいは加速させていかねばという危機感があげられる。
日経新聞の記事から引用すると、
ドコモはこれら非通信サービスを成長の軸に据え始めた。動画配信なども含めた非通信部門の17年度の営業利益は約1400億円。全体の14%を稼ぐまで成長。金融決済分野のサービスはそのうち約2割を占め、非通信の柱の一つに育った。
非通信分野で成長を遂げるためには、ドコモならではの強・みをさらに打ち出す必要がある。
ということで、近年、非通信領域の営業利益は全体の14%まで拡大し、その中でも金融決済分野はそのうちの約2割を占めるという大きな柱となっている。
その金融決済分野を大きく飛躍させる手段の1つとして、通信で得た膨大なユーザーデータというアセットを最大限に活用できる事業ということで、信用スコア(クレジットスコア)の領域に参入したと考えることができるだろう。
また、これは想像となるが、2019年4月1日付けで、今まで全株式の34%をドコモが保有していた三井住友カードの全株式を三井住友フィナンシャル・グループが買い取ることが発表されている2。
これは、今後三井住友フィナンシャルグループのみではなく、様々な金融機関と連携し、さらに金融領域を大きな柱としていきたいという意志の現れなのかもしれない。
まとめ
ここまで、NTTドコモの「ドコモレンディングプラットフォーム」及びその核となる「ドコモスコアリング」について解説してきた。
携帯キャリアとしてのNTTドコモが、非通信領域、特に金融領域を伸ばしていく一手として投じたこの新規事業。
「携帯電話の支払い履歴等のドコモが保有しているデータを利用することでどこまで精度が高い信用スコアを算出できるのか」が大きなポイントとなってくるだろう。
信用スコアの国内プレーヤーでいうと、ヤフーやJスコアに比べるとデータの種類という意味では若干目劣りするため、継続的な支払いデータは信用に大きく寄与するのだろうか?
今後、現在発表しているデータ以外にも、第三者提供のデータも含めて様々なデータが統合されてくると、さらに意味のあるものとなってくるかもしれない。
まずは、3月の新生銀行によるサービスインを楽しみにしよう。
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