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マクドナルドが買収した個人化サービス「Dynamic Yield」の技術と事業内容

Dynamic Yield とマクドナルド

マクドナルドがAIによるパーソナライゼーションを提供する「Dynamic Yield」を買収した。

この買収劇を予想できた人はそう多くないだろう。

また、そもそも「Dynamic Yield って何を提供しているの?」と疑問をお持ちの方も多いことだろう。

本記事では、Dynamic Yield の基本情報、事業内容とテクノロジー、マクドナルドとのシナジーについて解説していこう。

Dynamic Yield 会社概要

Dynamic Yield 公式サイト
Dynamic Yield 公式サイト

Dynamic Yield は、2011年にアメリカのニューヨークで創業された会社だ。

これまでに、8,330万ドル(約91億円)を調達している。直近の2018年11月のシリーズDでは、LINE の親会社でも有名な Naver がリードで入っており、当時は日本や韓国への導入を進めていくのではと噂されていた。

マクドナルドには、3億ドル(約330億円)で買収されている。

創業者兼CEOの LIAD AGMON 氏は、これまでに2社の創業と売却を経験しているシリアルアントレプレナーだ。

創業者兼CEOの LIAD AGMON 氏
創業者兼CEOの LIAD AGMON 氏

これまでに、OnigmaをMcAfeeへ、DelverをSears Holdingsへそれぞれ売却している。

また、バックグラウンドとしては、イスラエルのテルアビブ大学でコンピュータサイエンス学士及びMBAを取得しているまさにエリートである。

Dynamic Yield の導入企業

Dynamic Yield は、2018年11月時点で、220のグローバルブランドで導入されている。

Dynamic Yield の導入企業抜粋
Dynamic Yield の導入企業抜粋

導入企業としては、Eコマース系を中心に、ゲームや旅行などのカテゴリーの企業にも導入が進んでいる。

導入した企業では、平均して10〜15%ほどの収益増加がされているという。

顧客獲得コストが上がっていく中で、サイト訪問ユーザーへのアプローチの重要性は高まっている。このような背景の中で、伸びてきているサービスといえるだろう。

Dynamic Yield のテクノロジーと事業内容

では、Dynamic Yield の事業内容について解説していこう。

Dynamic Yield では、基本的に「サイトやアプリ訪問ユーザーに対するパーソナライゼーションを助けるサービス」を提供している。

そして、訪問後の会員ユーザーに対する、プッシュ通知やE-mailによるノーティフィケーションなども「パーソナライゼーション」の中に含まれている。

Dynamic Yield の Capability(能力)は、以下の6点に集約される。

Dynamic Yield の Capabilities
Dynamic Yield の Capabilities

中心となるのが「Customer Data Management」だ。オンライン・オフラインのユーザーデータを統合的に管理することで、様々なシーンにおける横断的なパーソナライズを可能にしている。

また、サイト訪問ユーザーのほとんどは「匿名ユーザー」であるが、匿名ユーザーの意図を予測する技術も有している。

「Personalization& Targeting」では、ページレイアウトやデザインをグリッド単位でパーソナライズするという、コンテンツ最適化の先をいく技術となっている。

「Behavioral Messaging」も面白い機能で、行動データをリアルタイムに分析して、ウェルカムメッセージやポップアップなどを最適化するという。

Behavioral Messaging の例
Behavioral Messaging の例

実際に、Dynamic Yield のサイトを訪れると、上の画像のように「Knowing you're from Japan, the weather is cloudy and cool」といったことがメッセージとして出てきている。これは今この記事を書いている私の状況とマッチしている。

この例については、若干怖さを覚えるユーザーもいるかもしれないが、このような形で様々なユーザーデータを元に自由自在にメッセージングができるという機能だ。

このように、Dynamic Yield では、ユーザーのデータを統合分析することで、その時々に合わせて最適なユーザー体験を実現している。

1つ1つの機能は見たことがあるようなものかもしれないが、これらを統合して1つのプラットフォームから管理できることは明確な強みといえるだろう。

Dynamic Yield とマクドナルドのシナジー

では、マクドナルドが Dynamic Yield を買収した目的はどこにあるのだろうか?

マクドナルドでは、Dynamic Yield の技術をドライブスルーの体験において主に利用していく方針だ。

マクドナルドによると、同社はその技術を利用してドライブスルーのメニューをそのときの天候や、お店の混み具合、メニューアイテムのトレンドなどに合わせてカスタム化する。またお客がオーダーを始めると、その選択に基づいて追加メニューをおすすめする。

個人化サービスのDynamic Yieldをあのマックが買収、ドライブスルーのメニュー充実へ | TechCrunch Japan

TechCrunch の記事にもあるように、天候やお店の混み具合、メニューアイテムのトレンドといったデータを活用してドライブスルーメニューを最適化していくようだ。

おそらく、これらに合わせて、さらに「個人」に対しての最適化も行っていくものと思われる。

また、Dynamic Yield のプレスリリースによると、マクドナルドが直近取り組んでいるセルフオーダー店舗や、モバイルアプリ自体にも Dynamic Yield の技術を応用していくようだ。

日本のマクドナルドに導入されるのは、まだ先のことかもしれないが、今後が楽しみである。

Dynamic Yield の競合・類似サービス

Dynamic Yield は、サイト分析のツールという意味で、Google Analytics Premium と比較されることが多い1。Google が買収しようとしていたのは、おそらく Google Analytics Premium の機能として、Dynamic Yield を取り込みたかったためだろう。

また、スタートアップでいうと、ドイツ・ベルリンの Segmentify、フィンランドの Nosto などが、Eコマースサイトのパーソナライゼーションサービスとして伸びてきている。

まとめ

本記事では、マクドナルドが買収したパーソナライゼーションサービス「Dynamic Yield」について解説してきた。

オンラインにおける個人最適化の次は、オフライン体験も個人最適化されていく未来がみえる。

マクドナルドによる Dynamic Yield 買収は、そのような未来も見据えたものなのではないだろうか。

買収後のマクドナルド動向に注目してきたい。