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「友達の信用スコアを与信審査に」Facebookの持つ特許について

Facebookの「友達の信用スコアを与信審査に利用する特許」について

Facebookの「友達」の信用スコアが自分の与信審査時に参照されるとしたら、あなたはどう思うだろうか?

スコアの高そうな人と友達になろうとして、反対に、スコアの低そうな人は unfriend する人も出てくるのだろうか?

本記事では、そんなリスクも孕んでいる Facebook の「与信審査時に友達の信用スコアを利用する特許」について解説していこう。

Facebook の特許の内容

Facebook の「友達のクレジットスコアを与信審査に利用する」特許は、2012年に申請、2015年に受理されている。

詳細はこちらで確認できる。

Facebookの友達の信用スコアを与信審査に利用
Facebookの友達の信用スコアを与信審査に利用

概要は、以下の通り。

When an individual applies for a loan, the lender examines the credit ratings of members of the individual’s social network who are connected to the individual through authorized nodes. If the average credit rating of these members is at least a minimum credit score, the lender continues to process the loan application. Otherwise, the loan application is rejected.

日本語訳すると、以下のようになる。

個人がローンに申請する際に、貸し手は、許可されたノードを通してその個人とつながりのあるソーシャルネットワーク上のメンバーのクレジットスコア(レーティング)を参照する。そのメンバーのスコアの平均が最低水準以上であれば、貸し手はローン申請のプロセスをそのまま続ける。そうでなければ、ローン申請は却下される。

つまり、ローン申請時の判断の足切りに、ソーシャルネットワーク上の友だちのクレジットスコアの平均値を利用するというわけだ。

現状は、特許を保有しているだけで、この内容が実際に行われているわけではないが、ちょっとゾッとするような内容でもある。

他の国では、中国の芝麻信用は、資金取引のある相手のみお互いに信用スコアが影響し合う仕組みになっていると言われている。

このように、深い関係性のある人のみのデータが利用されるというのであれば、まだ現実的かもしれない。

いずれにせよ、もし実施される場合には、倫理的な観点やユーザー体験の観点など、様々な要素を考える必要がありそうだ。

これは差別にあたらないのか?

法的な観点で、これは差別にあたらないのだろうか?

米国では、年齢、性別、人種、肌の色、宗教、国籍、婚姻ステータス、その他の個人的な情報により差別は、連邦取引委員会により禁止されている。

米消費者金融保護局の公正融資オフィスヘッドの Patrice Ficklin 氏によると「現時点でこの技術は合法である」としている。

ただ、「バーチャルスラム」のようなリスクも内在しているため、今後もし実利用されることになれば議論が必要となりそうだ。

信用を測る上で「友達」のデータは利用されるべきなのか?

その人の信用を測る上で、友だちの信用データは利用されるべきなのだろうか?

たしかに、その人の「信用」を測る際に、その人の友だちを見るということは、合理的な面もある。

現実世界において、ある人が信用に足る人物かを判断する際に、その人の Facebook の友だちを見てみるということをしたことがある人もいるかもれない。

「あ、この人とつながっているなら安心だな」とか「あれ、こっち系の人と仲良いのか」と思ったことがある人もいるかもしれない。

実際に、人材を採用する際に「リファ(レンス)をとる」ということも、インターネット業界などでは行われていたりする。

ただ、これが融資に利用されるとなると、あまり良い気持ちではないという人も多いのではないだろうか?

これまで人により曖昧に利用されていたものも、AIによる機械化あるいは自動化がされてしまうと、実際とは異なる間違った解釈がされてしまうという危険性もある。

日本の信用スコアサービスでは、今のところSNSのデータを利用するという事業者は出てきていないが、今後利用するようになる際には、その扱い方に細心の注意が必要となるだろう。

まとめ

本記事では、Facebook の保有する「Facebookの友達のクレジットスコアを与信審査に利用する特許」について、解説をしてきた。

Facebook のような莫大なデータを保有する企業には、今後これまで以上にそのデータの活用方法に倫理観が求められるようになるだろう。

また、そのようなデータは全て個人のものであるという個人主権化の考え方もGDPRを中心に強まっている。

生活者にとって納得感のある利用方法をとりつつ、しっかりとサービス運営ができるだけの収益をあげられるという両軸を達成する方法を考えていきたいところだ。