米国では、FICO社による「FICOスコア」というクレジットスコア(信用スコア)が主に利用されている。
ただ、その「FICOスコア」では、最低6ヶ月のクレジットヒストリーが必要なため、米国内では約4,500万人がスコアを保有できずにいた。
そのような中、FICOでは「FICO Score XD」という新たなクレジットスコアを考案した。
「FICO Score XD」では、公共料金や携帯電話の支払履歴などのデータを利用することで、クレジットヒストリーがない人のスコアリングを可能にしている。
本記事では、その「FICO Score XD」の仕組みや利用データについて、詳しく解説していこう。
FICO Score XD が必要とされる背景
まず、「FICO Score XD」が必要とされる背景について、解説していこう。
米国では「FICOスコア」が信用スコアのシェア90%以上を得ており、一般的に利用されている。
ただ、冒頭でも述べたように、「FICOスコア」では、最低6ヶ月のクレジットヒストリーが必要となるため、スコアリングができない人も出てきてしまっている。
米消費者金融保護局のレポートによると、FICOスコアの算出ができない人は「約4,500万人」にのぼっている1。これは、米国人口の約13.7%に値する数字である。
4,500万人のうち、2,600万人はクレジットヒストリーが全くない人(Credit Invisible)で、1,900万人はスコアリングするのに十分なデータがない人という内訳になっている。
これらの人々は、一般的な住宅ローンやパーソナルローンを組むことができず、一部の人は不当に高い金利の融資に手を出してしまうこともあり、社会的な課題となっている。
FICO Score XD とは?
そこで、FICOが考案したのが「FICO Score XD」という新たなクレジットスコア(信用スコア)である。
FICO Score XD は、一言でいうと、「クレジットヒストリーがない人のためのクレジットスコア」だ。
2015年に一部のクレジットカード会社でテストを開始し、現在では、アップデート版である「FICO Score XD2」が一般でも利用されている。
また、スコアのレンジは、通常の「FICO Score」と同じく、300〜850で算出される。
FICO Score XD の仕組みと利用データ
では、FICO Score XD では、どのような仕組みで、クレジットヒストリーがない人のスコアリングを可能にしているのだろうか?
FICO公式サイトに掲載されているアーキテクチャ図が分かりやすいので見てみよう
このように、FICO Score XD では、クレジットヒストリー以外の様々なデータを利用することでスコアリングを可能にしている。
利用データを整理すると、以下のようになる。
- 支払履歴(Payment History)
- 有料テレビやケーブルテレビ
- 公共料金
- 携帯電話 / 固定料金
- その他の信用関連データ
- 家の保有 / 家の価値
- 銀行口座の履歴
- 職業的ライセンス
- 引っ越しの頻度
これらのデータは、信用調査機関の Equifax のグループ会社である National Consumer Telecom Utility Exchange 、不動産系データを保有する Lexis Risk Solutions との連携による実現されている。
FICO Score XD で何が変わったか?
FICO の発表によると、FICO Score XD の導入により、これまでに約2,650万人が新たにクレジットスコアを保有できるようになったという2。
申請者のうち、元々91%がスコアを手に入れることができていたが、FICO Score XD の導入により、その確率は 98% にまで上昇した。
さらに、FICO Score XD で620以上の人のうち、75%は2年以内に通常の FICO Score を手に入れていることから、まさに FICO Score XD が FICO Score への入り口として機能しているということが分かる。
まとめ
本記事では、FICO社による「FICO Score XD」という「クレジットヒストリーがない人のためのクレジットスコア」について、解説をしてきた。
「FICO Score XD」の仕組みは、中国アントフィナンシャルの「芝麻信用」の仕組みとも近い。
また、今日本で盛り上がってきている信用スコアサービスも、「FICO Score XD」と同じように、信用データ以外の様々なデータを用いる方針だ。 www.dappsway.com
FICO Score XD が FICO Score でスコアリングできない人たちのスコアリングを可能にしたように、日本でも既存の信用システムでは正当に評価できない人を正しく評価できるようになるのではと、期待が高まる。
FICOは、この他にも、2019年に入り「Ultra FICO」というスコアを発表している。
こちらも合わせて確認すると、さらに理解が深まるだろう。 www.dappsway.com