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中国発の火鍋店「海底撈(ハイディーラオ)」数字分析|AIやディープラーニングの利用も

数字から見る海底撈(ハイディーラオ)|中国発急成長火鍋店の今後の戦略は?

前回の記事では、深センの海底撈(ハイディーラオ)を訪れた経験を元に、その「体験性」について解説してきた。

本記事では、そんな海底撈(ハイディーラオ)の売上や店舗数、人件費などの「数字」部分にフォーカスしていくことで、さらに理解を深めていければと思う。

「定性」の次は「定量」ということで、海底撈(ハイディーラオ)の投資家向け資料を元に解説していこう。

海底撈(ハイディーラオ)の基本情報

海底撈(ハイディーラオ)は、1994年に中国四川省で創業された会社だ。正式名称は「Haidilao International Holding」。

主に火鍋店の「海底撈火鍋(Hidilao hotpot)」を展開している。

2018年9月の上場以来株価は右肩上がりで成長している
2018年9月の上場以来株価は右肩上がりで成長している

2018年9月に香港証券取引所に上場し、それ以来株価は50%ほどの上昇をみせ、19年6月5日現在、時価総額は1.93兆円にまで達している。

日本の飲食チェーン大手のすかいらーくホールディングスやゼンショーホールディングスの時価総額が3,000億円ほどであることを考えると、その金額の大きさも分かりやすい。

海底撈(ハイディーラオ)売上・純利益・利益率

海底撈(ハイディーラオ)の詳細の数字を確認していこう。

まず、2018年度の売上・当期純利益・利益率は以下の通り(1人民元=15.73円で計算)。

  • 売上:2,669億円
  • 当期純利益:259億円
  • 利益率:9.7%

売上高でいうと、まだそこまで大きくないが、利益率は高水準にあるといえる。日本のすかいらーくやゼンショーと比較すると、ハイディーラオは売上は低いが当期純利益は高いという立ち位置となる。

参考までに、日本の大手飲食チェーンの2018年度決算における利益率は以下のようになっている。

  • ワタミ:1.45%
  • ゼンショーホールディングス:3.4%
  • すかいらーくホールディングス:3.2%

この要因として、中国の安い人件費ももちろんあるはずなので、中国国内の他の飲食チェーンとも比較してみたいところだ。

ちなみに、ハイディーラオの顧客一人あたり平均支払額は、2018年で101元(約1,588円)なので、安い人件費の分だけ金額も十分に下がっているとみることもできる。

従業員数は6万人超え。平均給与は114万円

従業員数は、2018年12月31日時点で、69,056人。そのうち、66,219人が中国国内、2,837人が海外で働いている。

人件費の合計は、5,016.3百万人民元(約789億円)。これらの数字から従業員の平均給与を算出すると、以下の通り。

  • 平均年間給与:114.3万円
  • 平均月間給与:9.52万円

平均数値なので何とも言い難いが、日本の水準から考えると、低い水準である。

前回記事でもご紹介したように、中国の他の飲食店とは桁違いの接客の良さではあったが、それでも特段給与が高いというわけではなさそうだ(別途、中国の他の飲食チェーンの数字についても調べたい)。

店舗総数は急速拡大中。日本の4店舗含め海外展開も

店舗総数は急速拡大中。日本の4店舗含め海外展開も

海底撈(ハイディーラオ)のレストラン総数は、「273店舗(2017年)→466店舗(2018年)」と1年間で70%増という急成長を遂げている。

また、その中には、6カ国26店舗に及び海外店舗も含んでおり、アジアを中心とた各国へ市場を広げていることがわかる。

海底撈(ハイディーラオ)の海外店舗数は以下の通り。

  • アメリカ:3店舗
  • カナダ:1店舗
  • オーストラリア:1店舗
  • シンガポール:11店舗
  • 日本:4店舗
  • 韓国:6店舗

海外については、2012年にシンガポールに進出して以来、他国への進出も徐々に進めているようだ。

日本では、大阪心斎橋、千葉幕張、新宿、池袋の4店舗が展開されている(2019年6月現在)。

池袋の店舗の口コミをみてみると、評価は上々のようだ。

tabelog.com

海底撈(ハイディーラオ)の事業戦略とテクノロジー活用

さいごに、投資家向け資料に記載されていた2019年の事業戦略についてご紹介しよう。

海底撈(ハイディーラオ)では、2019年の成長戦略として、以下の4点をあげている。

  • 【店舗ネットワークの拡大】店舗の密度をさらに高め、店舗でカバーするエリアをさらに拡大するなど、店舗ネットワークを戦略的に拡大し続ける
  • 【食事体験向上のための付加価値】サービス能力の継続的な向上を含む、海底撈の食事体験を向上させ続ける付加価値サービスなどの提供
  • 【既存店舗の収益改善施策】新製品の開発を継続したり、オフピーク時にレストランの利用を継続したりするなど、既存店の成長を促進し、新しい収入源を拡大する
  • 【テクノロジーへの投資】ビジネス管理システムの最適化、開発の継続、インテリジェントなレストランテクノロジーなど、テクノロジーへの投資を継続

このように、店舗ネットワークの拡大、食事体験向上のための付加価値、既存店舗の収益改善施策、テクノロジーへの投資が成長戦略の柱となる。

深センのハイディーラオにいた自動配膳ロボット
深センのハイディーラオにいた自動配膳ロボット

先日深センの店舗を訪問した際には、自動配膳ロボットが稼働しているなど、テクノロジー投資の片鱗を見ることができた。

また、目に見えないところでも、テクノロジーの活用は進んでいる。

Forbes の記事によると、海底撈(ハイディーラオ)はアリババクラウドを用いたAIのアルゴリズムによって店舗の立地戦略を導き出しているという。

人口密度、商業機会、近隣の飲食店、カラオケ等のナイトライフを楽しむ場所といった情報から、AIによる数値化を行うことで立地戦略に活かしている
人口密度、商業機会、近隣の飲食店、カラオケ等のナイトライフを楽しむ場所といった情報から、AIによる数値化を行うことで立地戦略に活かしている(写真は深センの開発風景)

具体的には、地域ごとに、人口密度、商業機会、近隣の飲食店、カラオケ等のナイトライフを楽しむ場所といった情報から、AIによる数値化を行っている。これに加えて、現地の不動産デベロッパーからの情報も加味することで、店舗の立地を決定しているようだ。

また、在庫管理には、テーブル回転率や食材ごとの消費トレンドパターン等を元に、ディープラーニングを用いることで、生鮮食材の仕入れや食材の店舗への供給の最適化を行っているという。

表向きの体験性というエンタメ要素に加えて、見えないところではテクノロジーの下支えもあるというのが、海底撈(ハイディーラオ)の正体なのだ。

まとめ

本記事では、中国で話題の火鍋料理店「海底撈(ハイディーラオ)」の基本的な数字と、テクノロジーを絡めた事業戦略について解説をしてきた。

急成長を遂げている海底撈(ハイディーラオ)から学ぶべきことは多い。

数字を把握した上で、実際に店舗にいってみても面白いだろう。近くに店舗がある方はぜひ行ってみてほしい。

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