インドの信用スコア事情について知りたいと思ったときに、日本語の記事はほとんど出回っていないため、困っている方も多いだろう。
インドでは、インドの中央銀行であるインド準備銀行からライセンスを付与されている4つの信用情報会社が、信用スコア(クレジットスコア)を提供している。
本記事では、インドの信用スコア事情について、4つの信用情報会社と新興の信用スコア関連スタートアップについて紹介していこう。
- インドの信用スコア(クレジットスコア)を提供する4つの信用情報会社
- インドの信用スコアの共通点
- インドの信用スコアの利用データは?
- インドの信用スコアの相違点
- クレジットヒストリーがない人向けの新たな信用スコア
インドの信用スコア(クレジットスコア)を提供する4つの信用情報会社
インドでは、「CIC(Credit Information Company:信用情報会社)」と呼ばれる企業が、信用レポート及び信用スコアの提供をしている。
CICは、インド準備銀行(Reserve Bank of India, RBI)によるライセンス制で、現在は以下の4社が該当する。
- TransUnion CIBIL(トランスユニオン シビル)
- Experian(エクスペリアン)
- Equifax(エキファックス)
- High Mark(ハイマーク)
CIC は、信用スコアリングの元となるデータを収集し、それぞれ別々のアルゴリズムで信用スコアを算出している。
アメリカでは、Experian、TransUnion、Equifax の3社が「FICO」の共通アルゴリズムによる信用スコアを算出しているが、この点において、米国とインドは異なる。
インドの金融機関の多くは、複数のクレジットレポート及びクレジットスコアを参照する慣習があるというが、それはこのように各社それぞれのアルゴリズムを利用しているからともいえるだろう。
では、それぞれの信用スコアには、どのような特徴があるのだろうか?
大きな違いはないが、簡単に各社の情報をみてみよう。
TransUnion CIBIL Score
TransUnion CIBIL Score(トランスユニオンシビルスコア)は、インドで最も利用されている信用スコアだ。簡単に「CIBIL Score」と呼ばれることが多い。
2000年設立でインドで最初のCICとなった。
インドの金融機関のうち、85〜90%が「CIBIL Score」を利用していると言われている。
スコアは、300〜900で算出される。
Experian
Experianは、世界展開をしている米国に本社を置く企業だ。2014年の Forbes「World’s most innovative companies」にもノミネートされている。
インドでは、2010年からサービスを開始している。
Experian の信用スコアは、330〜830の間で算出される。やや覚えにくい数字だ。
Equifax
Equifaxも、Experian と同じく、米国を中心に世界展開している企業だ。
アメリカでは1899年創業の老舗企業、インドでは2010年よりRBIからライセンスを付与されている。
Equifax の信用スコアは、300〜850の間で算出される。
High Mark
High Mark は、正式名称は「CRIF High Mark Credit Information Services」という。
元々は「CRIF」がついていない「High Mark Credit Information Services」という名称であったが、2014年にイタリアの信用情報会社である「CRIF」が株式の大部分を取得したため、現在の名称になっている1。
High Mark も2010年にライセンスを付与されている。
High Mark の信用スコアは、300〜900の間で算出される。
インドの信用スコアの共通点
ここからは、インドの信用スコアを俯瞰してみてみよう。
まず、インドの信用スコアにおける共通点としては、以下の点があげられる。
- 全ての信用スコアが金融機関から認められている(優劣はない)
- 基本的に同じデータを利用している
では、実際にどのようなデータを利用しているのか?
インドの信用スコアの利用データは?
例として、最も一般的な「CIBIL Score」の利用データをみてみよう。基本的に、他の信用情報会社の信用スコアも利用データとしては同様である。
パラメーター | 割合 |
---|---|
過去の返済履歴 | 30% |
担保ローンと無担保ローンの比率 | 25% |
与信枠の利用割合 | 25% |
その他(ローンの数 / 申請数) | 20% |
基本的に、いわゆるクレジットヒストリーと呼ばれるこれまでの借り入れ実績を元に判断されている。
米国の FICO Score とも似ているものだ。
インドの信用スコアの相違点
先程、インドの信用スコアの共通点について触れたが、では相違点としてはどのような点があるか?
大きな相違点としては、以下の3点がある。
- スコア算出のアルゴリズムが異なる
- スコアの範囲(上限・下限)が異なる
- クレジットレポートが手に入るまでの日数が異なる
2点目のスコアの範囲については、統一したほうが金融機関の効率性も上がるではと思わせられる。
クレジットレポートが手に入るまでの日数については、たとえば CIBIL Score は申請から7日で閲覧できるが、Experian は10日かかるといった違いがある。
クレジットヒストリーがない人向けの新たな信用スコア
このような、インド準備銀行にライセンスを受けた信用情報企業による信用スコアでは、クレジットヒストリーがないという理由でスコアリングができない人もいる。
そのような人に対しても適切な金利による融資を可能にするために、CICが利用していないデータを用いて信用スコアリングを行うスタートアップも出てきている。
具体的には、SHUBH LOANS(シュブローン)、Credit Vidya(クレジットヴィディヤ)というサービスがある。
また、信用スコアリングによる後払いソリューションを提供するスタートアップとして「ZestMoney(ゼストマネー)」にも注目だ。
これらの企業については、別記事にて、それぞれ解説していくので、お楽しみに。