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インド政府が進めるオープンAPI「インディア・スタック」の仕組み

インド政府が推進するオープンAPIの集積体「インディア・スタック(India Stack)」

インド政府が推進するオープンAPIの集積体「インディア・スタック(India Stack)」をご存知だろうか?

簡単にいうと、インディア・スタックは、インド版マイナンバー「アドハー(Aadhaar)」をキーにして本人確認や送金などを実行することができるAPIの集積体である。

インドの FinTech スタートアップの実に84%はインディア・スタックを利用しているというデータもあることから、既に生活に根付いたものになっているといえるだろう。

本記事では、そんな「インディア・スタック(India Stack)」についての概要、メインとなる5つのAPI、各APIの利用状況について解説していこう。

インディア・スタック(India Stack)とは?

まずは、インディアスタックとは何かを簡単に解説していこう。

冒頭でも簡単にご説明したとおり、インディアスタックとは、インド政府主導のもと進められている「オープンAPIの集積体」である。

インディアスタックは、2016年にモディ首相の元で開始され、それ以降、急速な広まりを見せている。

YES Fintech IFOR Survey 2017 によると、2017年時点で 84% のインドの Fintech スタートアップがインディア・スタックのAPIを利用しているという。

インドの84%の FinTech スタートアップがインディア・スタックを利用

もはや新規でサービスで立ち上げる際には、「当たり前」のように利用するサービスになっているといえるだろう。

国民のおよそ半数が身分証明書を持っていなかった

このように、インドでは、今でこそAPIを通じて本人確認や送金等が簡単にできるようになり、デジタル化において「先進国」といえる状態だが、2009年頃までは、今とは真逆の「後進国」であった。

というのも、身分証明書を持たず、出生証明書さえないという人が国民のおよそ半数を占めるという状態だったからだ。

身分証明書がなければ、そもそも本人確認もできず、その人に対して送金をすることもできない。政府が補助金を送付しようとしても、対象者に直接送ることはできず、仲介者を経由しなければならず、その仲介者の不正等により補助金もうまく機能しないといった問題もあった。

そのような中、2009年に、政府は「Aadhaar(アドハー)」と呼ばれる12桁の国民識別番号を発行するプロジェクトを発表した。日本でいう「マイナンバー」だ。

Aadhaar では、指紋認証と網膜スキャン技術を使用した生体認証データを利用している。Aadhaar を取得した国民は、年々順調に増えていき、2018年末までに人口の約90%に当たる約12億人に達している。

ちなみに、「Aadhaar(アドハー)」は、ヒンドゥー語で「基礎」の意。まさに、インド国民において「基礎」となるデジタルIDとなってきているといえるだろう。

インディア・スタックの主要5機能

インディア・スタックに話を戻そう。

インディア・スタックでは、先述の「Aadhaar(アドハー)」も含め、5つの代表的なAPIが用意されている。

その5つとは、国民識別番号の「Aadhaar(アドハー)」、本人確認の「eKYC」、電子署名の「eSign」、情報の保存に利用する「Digital Locker」、送金の「UPI」である。

Aadhaar(アドハー)の主要なAPI
Aadhaar(アドハー)の主要なAPI

それぞれ簡単に解説をすると、以下の通りである。

国民識別番号の「Aadhaar(アドハー)」

Aadhaar(アドハー)は、先述した通り、12桁の国民識別をするためのデジタルIDである。

Aadhaar 認証APIを利用することで、サービス側は国民識別番号単位で個人を認証することができる。

基本的に、全てのAPIは、この Aadhaar のIDをキーにして、データの連携が行うことになる。

ちなみに、Aadhaar の生体認証の技術は、NECが提供している。

www.newsweekjapan.jp

本人確認の「eKYC」

eKYC は、本人確認(KYC = Know Your Customer)を簡単に行うことができるAPIだ。

信用が必要となるCtoC系サービス、保険、投資信託等の領域で特に利用がされている。2017年時点で、34億のKYCが「eKYC」のAPIを通じて行われたという。

電子署名の「eSign」

eSign は、ドキュメントへの電子署名を簡単に行うことができるAPIだ。

これにより、今までの紙でやり取りしていた署名手続きをする必要がなくなる。

文書の保存に利用する「Digital Locker」

Digital Locker は、公的な書類などの電子データを保存しておくことのできるクラウドストレージだ。

国民は、自らの Aadhaar に紐付いたストレージに、公的なドキュメントや証明書などを保存しておくことで、必要な際に参照させることができる。

たとえば、車の免許証を保存しておくことで、シェア自動車の利用がすぐにできるといった利用の仕方がされている。

送金の「UPI」

UPI は、Unified Payment Interface の略で、銀行口座保有者間の送金をアプリから簡単に実行できるようにするAPIだ。

日本でもおなじみの PayPay の技術部分を担っている Paytm もこの UPI を利用して送金を行っている。

インディア・スタックはどれほど利用されているのか?

これらのインディア・スタックのAPIは、実際にどれほど利用されているのだろうか?

インディア・スタックの数字
インディア・スタックの数字

Aadhaar の認証は30億回ほど、ここ3年の eKYC の利用は1.5億回ほどと、非常に規模の大きな数字が並んでいる。

また、Bharat Inclusion Initiative の150のスタートアップを対象にした調査をみると、API毎の利用比率は、以下のようになっている。

インディアスタックの利用比率

Aadhaar が最も利用されており、ついで、eKYC、eSign、UPI、DigitalLocker という順となっている。

まとめ

本記事では、インド政府が進めるオープンAPI「インディア・スタック(India Stack)」について、解説をしてきた。

次の記事では、このインディアスタックを利用して、実際にどのようなサービスが実現されているのか、解説していこう。

インドの事例から学ぶことは多い。色々とご紹介していければと思う。