「情報銀行」と「信用スコア」はどのような関係なのだろうか?
このような疑問をお持ちの方も多いではないだろうか?
「情報銀行」と「信用スコア」は、共に2018年末よりニュースでも特集されるようになり、さらに共にパーソナルデータと関わりがあることから、「一緒くた」に語られることも多い。
しかし、両者は、それぞれ異なるものであり、別の概念として理解しておく必要がある。
本記事では、「情報銀行」と「信用スコア」の関係性について、整理していこう。
情報銀行と信用スコアの関係性
結論からいうと、情報銀行と信用スコアの関係性は、以下の図のようになっている。
つまり、それぞれ異なるサービスでありつつ、重なる可能性もあるという関係性だ。
情報銀行は、「AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ 中間とりまとめの概要」(内閣官房IT総合戦略室)によると、以下のように定義される1。
情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業。
図に示すと、以下のようになる。
このように、情報銀行は、「生活者の信託(預託)に基づき、パーソナルデータを第三者に提供する事業」のことを指している。
この背景には、「データは生活者のもの」というデータの個人主権化の考えがあり、生活者が自らデータを管理していけるような世界が想定されている。
一方、信用スコアは、「様々なデータを用いて、個人の信用度合いをスコアリングし、自社内での活用や必要に応じて第三者への提供も行う」ような事業である。
そのため、「情報銀行で扱うパーソナルデータを信用スコアの算出に活かす」といったことは、もちろん可能である。
情報銀行によりパーソナルデータを生活者が自由に管理できるようになれば、信用スコアリングを行う事業者は、今まで利用できていなかったデータを用いてスコアリングを行うことができるようになる可能性もある。
つまり、関係性という観点では、「情報銀行は信用スコアをサポートしうる関係」にあるとも言うことができる。
ただ、当たり前のことながら、情報銀行事業者が、生活者の信託なしに勝手にデータを利用して信用スコアリングを行うようなことはあってはならない。
情報銀行が信用スコアを扱う際の3つのパターン
総務省の金融データワーキンググループの資料2で、情報銀行が信用スコアを扱う場合についての整理があったので紹介しよう。
情報銀行が信用スコアを扱うパターンとして、以下の3パターンがあるという。
パターン1:信用スコアを受け取り信用スコアを提供
パターン1は、スコアリング済みの信用スコアを受け取り、そのスコアをそのまま提供するパターンだ。
この場合には、信用スコアといえど他の個人情報と位置づけは変わららない。
パターン2:信用スコアの元となるデータを受け取りそのデータを提供
パターン2は、信用スコアの元となるデータを受け取り、そのデータを元にスコアリングをする事業者に対して提供するパターンだ。
このケースの場合には、データの提供先で「信用スコアのスコアリングに利用される」ということが、生活者がきちんと認識しており、生活者の信託のもと行われることが必要となる。
パターン3:信用スコアの元となるデータを受け取り信用スコアを提供
パターン3は、1つの企業が情報銀行と信用スコアの両サービスを兼ねるパターンだ。
信用スコアの元となるデータを受け取り、そのデータを元に信用スコアリングを行い、第三者企業へと提供する。
情報銀行と信用スコアを兼ねる企業は存在するのか?
ここまでで、情報銀行と信用スコアそれぞれについての説明、情報銀行が信用スコアを扱う3つのパターンについて整理をしてきた。
では、実際に、このパターン1〜3に当てはまる企業は、存在するのだろうか?
結論をいうと、19年3月時点では、パターン1〜3の全てで該当するケースは出てきていないのが現状だ。ソフトバンクとみずほ銀行の合弁企業であるJスコアが情報銀行の認定取得に向けて動き出すという。
冒頭の図で説明すると、以下のような状況である。
以前、JスコアのCEO大森氏は、日経新聞の取材に対して、以下のように答えていた3。
今後、法制度の整備や、情報銀行の認定要件が見えたところで、情報銀行になるメリットがあれば認定を受けることを検討したい。
18年12月時点では検討中であったが、19年5月には認定取得への動きを開始したというわけだ。今後、他の信用スコア関連企業も情報銀行に乗り出すことが考えられるため、注目していきたい。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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