アドテク領域におけるDMP国内最大手のインティメート・マージャーが、信用スコアの提供を開始している。
クロスデバイス技術でグローバル展開をする Drawbridge とのデータ連携により実現するとのこと。
信用スコアというと、個人の許諾のもとにデータをもらいスコアリングする方法が主流だが、インティメート・マージャーの描く信用スコアは、ちょっとそれとは異なる領域を攻めていくようだ。
アドテクからフィンテックへという領域の拡大についても非常に興味深い。
本記事では、そんなインティメート・マージャーの信用スコアについて解説していこう。
インティメート・マージャーの信用スコア概要
インティメート・マージャーは、2018年11月20日のプレスリリースにて、Drawbridge とのデータの相互連携を開始し、ダイナミックデータを用いた信用スコアサービスの提供開始を発表した。
ここでいう、ダイナミックデータとは、「端末に紐づいている情報から、対象の興味関心をリアルタイムに収集・解析し、活用するデータ」のことをいう。
「信用スコア」という領域でいうと、ヤフーやドコモ、メルペイ等が参入を発表しているが、インティメート・マージャーの扱う信用スコアと、それ以外の信用スコアの大きな違いとして、それがユーザーの許諾のもとスコアリングされているか否かがありそうだ。
インティメート・マージャーが元にしているのは、DMPでも利用しているクッキーデータや端末識別子である。これらを、Drawbridge のクロスデバイスマッチング技術を活用することで、誰かは分からないがAさんという同一のユーザーを認識しているわけだ。
信用スコアリングの利用データは?
スコアリングに利用しているデータを整理してみよう。
インティメート・マージャー側で保有しているのは、約4.7億件のオーディエンスデータ。すなわち、ウェブブラウザのクッキー単位におけるウェブ上の行動データや、IDFAやADIDといった端末識別子単位のアプリ利用データということになる。
一方、Drawbridge 側で保有しているのは、各クッキーのデータ、端末識別子のデータのマッピングデータベースだ。全世界でいうと、その数は、33億台のデバイス、約10億人の月間アクティブデータとなるという。
この両者のデータを組み合わせると、ある特定のユーザーが、ある時はスマホで2ch掲示板を見ており、その後ニュースアプリで特定のニュースを見ていたり、家に帰るとPCで動画サイトを見ていたりといった今までバラバラのユーザー行動として認識されていた事象が、一人のユーザー行動として分かるようになる。
この情報をもとに、どう「信用」をスコアリングするかというところについては、筆者の予想になるが、おそらく不正行為を行ったID等を検知し、そのIDに紐づく個人に対してスコアリングを下げていったり、機械学習でそのような不正行為を行うユーザーに近しいIDを評価していったりするものと思われる。
信用スコアの活用先は?FinTech領域への提供
信用スコアの活用先としては、「ヒト・モノ・カネといった経営資源に基づいた定量的な判断をサポート」としている。
また、プレスリリースの中で、「更なるデータ精度・網羅性の向上を用いてAd Tech分野のみならず、Fin Tech等多業種への活用を推進」としていることから、フィンテックで必要とされる不正検知やセキュリティ面での利用を検討していると思われる。
新生銀行と資本業務提携
19年3月29日、インティメート・マージャーは新生銀行と資本業務提携を発表した1。
同社のプレスリリースによると、「このたびフィンテック領域への展開を進めるにあたり、データ活用に向けた先進的な取り組みを行っている新生銀行と協力し、共同研究を進めてまいります。」というように、まずは共同研究に乗り出すようだ。
おそらく、インティメート・マージャーの信用スコアをどのように新生銀行で利用していけるか検討していくのだろう。
新生銀行では、グループ会社のセカンドサイトで「SXスコア」という信用スコアを開発している。
「SXスコア」との連携についても、今後どのような動きがあるか楽しみだ。
参考モデル:米国NYスタートアップの Forter
参考になるモデルとしては、米国NYに本社のある Forter というスタートアップが挙げられる。
2013年に創業し、総額$100M(約110億円)を調達している急成長スタートアップの1つだ。
彼らの提供するサービスは、ビッグデータを分析することで、アカウント乗っ取りやアカウントの乱用といった不正行為を検知し、フラウドユーザーの特定ができるというものだ。
Forter の場合では、リテーラー向けに提供しているが、同じような仕組みで不正ユーザーを検知して早期解決を図るという手法は、FinTech 領域にも応用できるだろう。
まとめと考察
本記事では、インティメート・マージャーによる信用スコアの提供について解説してきた。
筆者としては、信用スコアにおいて重要な点は、自らの行動が信用スコアに反映されるという認識を持つことにより、不正の数自体が減少するという抑制効果にあると考えている。
今回にインティメート・マージャーによる信用スコアにおいては、クッキーや端末識別子といった個人情報ではないデータを用いていることから、個人から許諾は必要ない。そのため、個人としては認識しづらい一面がある。
ただ、抑制効果について考えると、自らがウェブ上で悪さをするとその他のサービス利用時に悪影響を及ぼすかもしれませんよということを認知させることは1つ重要なのかもしれない。
一方で、認知させてしまうと、その枠組をハックしてこようとする不正集団もいるかもしれないので、難しいところが検討の余地はありそうだ。
今後、インティメート・マージャーさんがどのように展開していくのか、また他社も追随していくのか、注目していきたい。