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モバイルデータで融資機会を 南アフリカ発「JUMO」の仕組み

南アフリカ発のレンディングプラットフォームJUMO

先日はケニア発の融資サービス「Tala」をご紹介したが、今回は同じくアフリカにおける融資領域の課題解決に挑む「JUMO」というスタートアップをご紹介しよう。

JUMO は、アフリカ8カ国に加えて、昨年ゴールドマン・サックスからの多額の資金調達を経て南アジアへの進出も果たしている。

そんなJUMOの躍進を支える仕組みは、パートナーシップ戦略にありそうだ。

本記事では、JUMOの仕組み、パートナーシップ戦略、Uberとの取り組みについて解説していこう。

JUMOの会社概要

JUMOは、2014年に南アフリカのケープタウンで創業された。

これまでに、9,170万ドル(約100億円)を調達している。特に、2018年には、ゴールドマン・サックスをリードとした5,200万ドル(約57億円)の増資を受け、勢いを増してきている。

JUMOは Google Developers Launchpad など様々な賞を受賞している
JUMOは Google Developers Launchpad など様々な賞を受賞している

創業初期には、Google Developers Launchpad で入賞し、Google Launchpad Accelerator からの資金調達もしている。

創業者の Andrew Watkins-Ball 氏は、ソロモンブラザーズで Vice President を務めるなど金融領域での経験のほか、南アフリカで Gateway Communications という通信会社を立ち上げボーダフォンに700億円ほどで売却した経験も併せ持つ人物だ。

まさに、南アフリカ発で FinTech 事業を立ち上げる上で適任といえるだろう。

テクノロジーカンパニーとしてのJUMO

JUMOは、従業員の半数以上がエンジニアリングやデータといったテック系の人材となっている。

JUMOは従業員の半数がテック系というテクノロジー企業
JUMOは従業員の半数がテック系というテクノロジー企業

現在募集中の採用ポストについてみてみても、やはり半数ほどは Data Engineer や Software Engineer などのテック系職種となっている。

解決する課題

では、JUMO では、どのような課題を解決しているのか?

銀行口座を保有していなかったりクレジットヒストリーがないために融資を受けられない人々がアフリカには多く存在している。JUMOでは、この課題を解決しようとしている。

世界銀行の発表によると、アフリカでは、16%しか正式な貯蓄サービスを受けられず、さらに6%しか正式な貸付サービスを受けることができていないという。

ただ、銀行を攻めることもできない。なぜなら、銀行としても彼らの「信用」についてのデータがなければ判断のしようがないからだ。

CEO の Watkins-Ball 氏の言葉を借りると、以下のような状況だ。

Part of the problem is you can’t get to these people. You don’t know anything about them. They’re not online,

問題の一部は、そのような人々(銀行口座を持たず信用を測ることができない人々)にリーチすることができないことだ。彼らについて何も知らない。彼らはオンラインにいないんだ。

では、銀行口座がなくても、その人の信用を測ることはできないのだろうか?

JUMOは、それを可能にした。

JUMOの仕組み

JUMOでは、どのように銀行口座を持たない人の「信用」を測っているのだろうか?

CEOの言葉を再び借りよう。

It is all there. The banks don’t have it. And Google doesn’t have it, because they’re not online. These are mobile markets, not online markets,

全てそこにあるんだ。銀行は持っていない。Google も持っていない。彼らはオンラインにいないからね。モバイルの市場なんだ、オンラインの市場ではなくて。

そう、JUMO はモバイル通信サービス事業者が保有するデータに目をつけた。

そして、そのデータを元に、「JUMO Score」とも呼ばれる信用スコアを作成し、自社による融資あるいはパートナーの銀行による融資を可能にした。

JUMOの仕組み
JUMOの仕組み

図解すると、上図のようになる。これは、銀行を通して融資をするパターンだ。

JUMOでは、MTNやAirtelといった通信事業者とパートナーシップを結んでおり、彼らからモバイルデータを取得している。

具体的には、以下のようなデータを利用しているという。

  • 通話履歴
  • 通話時間
  • データ通信量の購入
  • 資金的な取引

これらのデータを元に、銀行口座を持たない人でも、その人の信用を測ることができるようになった。

この仕組みにより、JUMOではこれまでに、1,000万以上の生活者にサービス提供を行い、10億ドル以上の貸付を行っている。

Uberとの提携「JUMO Drive」

さらに、JUMO は 2018年に Uber との提携を発表し1「JUMO Drive」というサービスも始めている。

JUMO Drive はケニアでパイロットプログラムを開始
JUMO Drive はケニアでパイロットプログラムを開始

JUMO Drive は、Uber の運転手向けに、自動車購入時のローン与信を JUMO が担うモデルになっている。

この JUMO Drive が面白いのは、Uber における移動データや行動パターンが信用スコアリングに利用されていることだ。

これにより、自動車ローンにおいて必要な「信用」として、安全運転でしっかりと継続的に稼ぐことのできる人物なのかを測ることができるわけだ。

JUMO Drive は、昨年12月にケニアでのパイロットプログラムを開始し、2019年中に他のアフリカ諸国でも展開していく予定だ。

パキスタンから始まったアジア進出

JUMOは、昨年2018年のゴールドマン・サックスからの増資を機に、初のアジア市場として、パキスタンでのサービスを開始した。

その後、おなじく南アジア地域のインドとバングラディッシュへの展開をしている。

アフリカでは、ケニア、ガーナ、ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、モーリシャスと8カ国で既に展開しており、このモデルはアジアでも通用すると判断したということだ。

まとめ

本記事では、南アフリカ発のレンディングプラットフォーム「JUMO」について解説してきた。

Tala と同じく、銀行口座は持たずともスマートフォンは持っているという人が多いことに着目し、サービスを展開した。

Tala と JUMO との違いは、JUMOではパートナーシップ戦略により、モバイル通信事業者や金融機関と組むことによりサービスを提供している点だろう。

日本でも、若年層の銀行を持たないあるいはほぼ使わないという層にとっては、このような評価モデルが必要になるかもしれない。

通信事業者のデータを利用するという点では、NTTドコモの信用スコアが近しいモデルともいえる。

アフリカや南アジアで通用しているモデルが日本でも役立つ日もくるかもしれない。