ドイツのフィンテックスタートアップ「Kreditech(クレディテック)」をご存知だろうか?
独自の信用スコアリングと LaaS(Lending-as-a-Service)という新たなビジネスモデルにより急成長を遂げており、ピーター・ティールや世界銀行グループのIFCも投資をしている今注目の企業だ。
本記事では、その Kreditech 社の成長要因に迫るべく、Kreditech の解決する課題、提供するサービス、信用スコアリングモデルについて解説していきたい。
Kreditech の企業概要
Kreditech はドイツのハンブルグに本社を構える2012年設立のフィンテックスタートアップだ。
ドイツ以外にも、ロシア、インド、ポーランド、スペイン、ルーマニアにインターナショナルオフィスを構えており、現地で金融サービスを展開している。
ちなみに、ドイツ語の「Kredit」は英語の「Credit」の意味であり、Kreditech は「Credit × Tech」からきた造語。Kreditech は、まさにクレジット(信用)とテクノロジーの会社というわけだ。
ピーター・ティールなどの豪華な投資家布陣
2012年設立ながら、既に $497M(約540億円)という大型の資金調達をしている。そして、その投資元はかなり豪華な布陣となっている。
世界銀行グループのIFC、PayPal創業者で現Yコンビネーターのパートナーであるピーター・ティール氏、Blumberg Capital といった、名だたる団体・個人投資家・VCが資金を投下しているのだ。
さらに、日本からは楽天も投資しており、ヨーロッパ展開において連携を探っている。
Kreditech のミッション
Kreditech のミッションは、以下のようになっている。
Provide financial freedom to the next 2 billion customers through technology.
テクノロジーを通して、次の20億人の顧客にフィナンシャルフリーダム(金銭的な自由)を提供する。
ここでいう「the next 2 billion(次の20億人)」とは、ミレニアル世代や既存の信用スコアリングでは正当な評価ができず、十分な金融サービスを受けられていない人たちのことだ。
Kreditech では、彼らに対して、テクノロジーを用いて正当な機会を与えていこうというわけだ。
Kreditech の提供する3つのソリューション
Kreditech では、3つのフィンテックソリューションを提供している。
Kredito24、Monedo、LaaS の3つだ。それぞれについて、簡単に解説していこう。
Kredito24(マイクロローン)
Kredito24 は、マイクロローンのサービスだ。
30日間の短期間の融資で、突発的な金銭的ニーズに対して、安全かつシンプルに応えたサービスだ。
Monedo(テイラーメイドな割賦払い融資)
Mondeo は、顧客のニーズに合わせたテイラーメイドな割賦(分割)払い融資サービスだ。
Kredito24、Monedo それぞれにおいて、Kredito の独自の機械学習アルゴリズムにより算出した信用スコアが役立てられている。
LaaS(Lending-as-a-Service)
そして、Kreditech のユニークなサービスとして、この LaaS(Lending-as-a-Service)の事業が挙げられる。
Kreditech では、Eコマース事業者向けに、以下の3つの金融オプションを提供できるようなサービスを提供しており、そのビジネスのことを「LaaS(Lending-as-a-Service)」と呼んでいる。
それぞれ、「POS installments」は固定期間の分割払いを可能にするオプション、「Buy Now Pay Later」は30日間のあと払いやリボ払いを可能にするオプション、「0% Financing」はセール時に金利0のローンを提供するものだ。
これらを、Eコマースサービスに導入することで、CVRの向上に役立てることができるわけだ。
投資をしている楽天も、同社のインターナショナルオフィスがある地域へ進出する際には、Eコマースサービスとして導入を検討しているのかもしれない。
機械学習によるスコアリングモデル
Kreditech のこれらのサービスを可能にしているのは、20,000以上のデータポイントから収集したビッグデータと独自の機械学習アルゴリズムだ。
利用データとしては、GPS、SNSの利用データ、ハードウェアから取得されるデータ、オンライン購買データ、その他オンライン行動データ等、多岐にわたっている。
まとめ
本記事では、ドイツのフィンテックスタートアップ「Kreditech」について解説してきた。
Kreditech のユニークな点は、LaaS と呼ばれるEコマース向けにレンディングサービスを簡単に導入できるようにしたサービスだろう。
LaaS のうちの「あと払い」だけであれば、米国の「Affirm」やインドネシアの「Akulaku」のあたりが類似サービスといえる。彼らも、あと払いサービスをEC事業者へ展開しており、大きな資金調達をしている。
ショッピングで物欲が高まった瞬間に、スッとあと払いや分割払いのオプションを差し出すことで今すぐ購入できるようにしてしまうという手法は、非常に理にかなったマーケティングであるし、正しく使われれば生活者にとっても嬉しいだろう。
一方で、ZOZOTOWNの「ツケ払い」で高額の負債を追ってしまった若者のニュースも耳にすることがある。
簡単にお金を前借りできてしまうことは、サービスを便利にする一方で、十分な金融知識も必要になってくる領域である。
今後も、十分な説明と理解のもと、便利なサービスが展開されていくことに期待したい。