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eプライバシー規則は消費者のためになるのか?4つの懸念と3つの改善案【動画あり】

LIKE A BAD MOVIE.

2019年に施行が予定されている「eプライバシー規則」に対して、欧州では議論が紛糾している。

eプライバシー規則は、通称「クッキー法」とも呼ばれるように、ユーザーのクッキーの利用について具体的に定めており、まさにその点において是非を問う議論が起きている。

そして、「LIKE A BAD MOVIE.」というムーブメントでは、「eプライバシー規則」の最悪のシナリオを描いた動画も公開している。

本記事では、eプライバシー規則の是非の論点を整理した上で、「LIKE A BAD MOVIE.」が描く最悪のシナリオとその回避策についてご紹介していこう。

eプライバシー規則(クッキー法)とは?

まず、eプライバシー規則について、簡単に説明しよう。

eプライバシー規則とは、欧州における「電子通信サービスの提供と使用における秘密を保護するもの」である。

2017年1月に規則案が公表され、本来であればGDPRと同時期の2018年5月に施行されるはずであったが、議論がまとまらずに、2019年中に施行されるのではと言われている。

eプライバシー規則は、GDPRの特別法にあたり、特にクッキーの利用について詳細に定めていることから「クッキー法」とも呼ばれている。

現行案のeプライバシー規則が施行されると、クッキーの利用について、基本的にオプトイン方式のユーザーの能動的な同意が必要となる。

これを巡って、様々な議論が巻き起こっているわけだ。

「LIKE A BAD MOVIE.」ムーブメント

eプライバシー規則に対して、改善を求める「LIKE A BAD MOVIE.」というムーブメントがある。

LIKA A BAD MOVIE. 参画企業

European Publishers Association (EPC)などのパブリッシャーメディア系団体、Interactive Advertising Bureau Europe (IAB Europe)等の広告系団体が参画している。

広告業界のみならず、メディアサイドからの反発もあるというわけだ。

その「LIKEA BAD MOVIE.」が作成している動画が面白いので、ぜひご覧いただきたい。

vimeo.com

現行案のeプライバシー規則が施行された場合に、どのようなバッドシナリオがありうるのか?

そして、そのシナリオから回避できるような改善策はあるのだろうか?

そのような内容が、この動画を通して示されている。

以下では、動画で描かれている「4つの懸念」と「3つの改善案」についてまとめているので、動画が見られない方や日本語で理解したい方は参考にしてみてほしい。

eプライバシー規則による4つの懸念

eプライバシー規則による4つの懸念について、それぞれ簡単な解説とともにみていこう。

広告モデルのオンラインメディアが制限されてしまう

広告で成り立っているオンラインメディアが制限されてしまう
広告で成り立っているオンラインメディアが制限されてしまう

まず、広告モデルで成立しているオンラインメディアが制限されてしまうということ。

日本でも、オンラインメディアはそのほとんどが無料でコンテンツを配信し、ターゲティング広告や記事広告(ネイティブ広告)による収益で採算を立てている。

「広告はウザい」とも言われるが、消費者が無料でコンテンツにアクセスできているのは、まぎれもなく「広告のおかげ」なのである。

あらゆるサイトで「同意」、消費者は混乱

あらゆるウェブサイトで「同意」を求められ、消費者は混乱してしまう
あらゆるウェブサイトで「同意」を求められ、消費者は混乱してしまう

次に、あらゆるウェブサイトで「同意」を求められてしまうということ。

eプライバシー規則では、ユーザーのオプトインによる同意がなければ、クッキーを利用することが基本的にはできない。

そのため、ポップアップなどで「同意しますか?」とあらゆるウェブサイトに訪問するたびに聞かれることになってしまう。

これは、一般消費者にとって良いユーザー体験だといえるだろうか?

広告モデルで成立しているアプリの消滅

広告モデルで成立しているアプリが消えていく
広告モデルで成立しているアプリが消えていく

3点目は、広告モデルで成立しているアプリが収益性の低下により消えていってしまうという点。

こちらは1点目の懸念に近いが、ウェブメディアだけでなく、アプリも同様に影響を受けると考えられるというわけだ。

無料コンテンツの有料化

無料コンテンツは限定的になり、お金を払わねば十分なコンテンツにアクセスできなくなる
無料コンテンツは限定的になり、お金を払わねば十分なコンテンツにアクセスできなくなる

さいごに、ターゲティング広告がなくなる代償として、消費者にそのコストが求められるという点だ。

コンテンツを読もうとした際に、「お金を払わなければ読めない」となると、それは消費者にとって良いユーザー体験だといえるだろうか?

「良質なコンテンツに対して対価を払う」という概念は立派であるものの、それを成立させるためには、マイクロペイメントのような本当に気軽に支払いができる仕組みが必要となる。

また、多くの消費者にとって、今まで無料でアクセスできていたコンテンツがいきなり有料となると、その感情的な抵抗は計り知れないだろう。

eプライバシー規則案に対する3つの改善案

このような4つの懸念を示した上で、「LIKE A BAD MOVIE.」では、3つの改善案を提示している。

以下の3点だ。

  • データの処理に、「正当な利益」などの根拠も認めること
  • 消費者へのより深い理解を促すこと
  • GDPRのテキストに沿うこと

1点目は、eプライバシー規則ではセッション管理やトラフィック計測における1st Party Cookieの利用は認めているので、「正当な利益」のような根拠も例外項目として追加してほしいという話だ。

2点目は、サイト上で同意を求めるポップアップが出てきても消費者は理解できないので、何らかの方法で理解を深める必要があるということ。

3点目は、おそらくであるが、オプトイン同意を義務化するのではなく、サイト上で利用目的を示せば(能動的な同意がなくても)クッキー利用ができるようにしてほしいという要望だと考えられる。

まとめ

本記事では、「LIKE A BAD MOVIE.」を題材に、eプライバシー規則の是非について解説をしてきた。

EUでは、データを活用した広告により年間5260億ユーロ(約66兆円)の経済効果があり、600万人の雇用がされているという。

EU経済や雇用問題は間接的に消費者の生活に影響をおよぼすであろう。

消費者にとって本当によい規則とはどのようなものなのか?

非常に難しい問題であるが、今後どのように施行に至るのか、注目していきたい。