メルカリは、子会社メルペイにおいてクレジットスコア(信用スコア)の事業を推進していくことを明言している。
クレジットスコアといえば、隣国である中国アントフィナンシャルの「芝麻信用(ジーマクレジット)」が有名だが、国内でも、Jスコアやヤフー、ドコモ、LINE等の大手のプレーヤーが名乗りをあげている状況だ。
そんな中、メルカリ/メルペイのクレジットスコアはどのような戦略で、何を強みに戦っていくのか、表向きになっている情報を整理して考察していきたい。
「信用スコア」について詳しく知りたい方は「信用スコアとは?仕組みとサービス事例を日本中国米国中心に徹底まとめ」をご覧ください。
メルカリ/メルペイの信用スコア戦略
早速、メルカリ/メルペイのクレジットスコア事業について見ていこう。
メルカリ現会長の山田進太郎さんは、NewsPicks の特集記事にて以下のように話している。
CtoCのビジネスエコシステムを作りたい
我々が目指すエコシステムは、メルカリが持っているデータだとかサービスを外部に開放することで、知見を持ち寄り、大きなイノベーションを起こしていこうという考え方
また、同じく NewsPicks の特集記事にて、メルペイ代表取締役社長の青柳さんは以下のように述べています。
そのオープンさを象徴して、メルペイの主要サービスの1つになるのが、個人の信用を数値化するクレジットスコアリングだと思っています。
データを自社で閉じて提供できるサービスが限られると、そもそもユーザーは使いたいと思わないでしょう。
それぞれが情報を持ち寄って、複合的なサービスを提供できるようにする。そういう世界を目指しています。
これらのことから分かるのは、メルカリはCtoCのビジネスエコシステムを作ろうとしており、基本的には全てを自社グループ内でやるというよりは、自社のデータもオープンにしていき他社と協調してイノベーションを起こしていく姿勢だということ。
そして、その手段として、メルペイのクレジットスコアが位置づけられるということだ。GAFA含め、データは資産という考えから自社グループ内で閉じた利用をする企業が多い中、このようにオープンな発想をお持ちなのはさすがである。オープンを志向しているというより、ユーザー体験を突き詰めていった結果、この結論に至ったのかもしれない。
メルカリクレジットスコアの利用データについて
では、メルカリがクレジットスコア事業をやるとして、どのようなデータを利用していくのだろうか。
明言しているものとしては、メルカリの相互評価のデータ、メルカリの出品データ、メルカリの購買データ、メルペイの決済データ、メルカリファンド各社の利用データとなっている。
国内フリマアプリとして圧倒的な地位を築いているため、メルカリ関連データの価値は非常に大きいだろう。となると、ポイントはやはりメルペイの決済データがどこまで蓄積されるのかという点だ。
ペイメント領域に関しては、LINE Pay、PayPay、Origami Pay に加え、ファミペイなど様々なプレーヤーが莫大な資金を投じて勝負を仕掛けに来ている。そのような中で、メルペイとしてどのような戦略で戦っていくのかは非常に注目しておくべきだろう。
また、芝麻信用がそうであったように、職歴や学歴といったデータはユーザー入力形式で追加で入力させることは十分に考えうる。ここは+アルファで考えておけばよいだろう。
今後の注目ポイント
前章でも記載したとおり、ペイメントのデータがどこまで集まるかには注目だ。クレジットスコアについて競合をみると、ヤフーやJスコア(ソフトバンク+みずほ銀行の合弁)には PayPay(ヤフーとソフトバンクの合弁)があり、ドコモには d払いがあり、LINEにはLINE Payがある。
すなわち、クレジットスコア事業を表明している企業は漏れなくQR決済の領域にも張っており、ここは1つの勝負ポイントとなるわけだ。
ペイメントに関して言えば、メルペイコネクトの服部さんが以下のようにインタビューで語っている。
まず、他社サービスとの大きな違いは給与所得の奪い合いにならないところです。現行のペイメントは、現金をはじめ、クレジットカード、交通系ICカードなど、基本はユーザーの給与所得がベースとなっていました。それが、メルペイだとメルカリによって不用品を販売して得た"お小遣い"のようなお金をベースに決済サービスが提供できる。金額にして3757億円(*)がプールされているのです
これはまさにメルペイの強みで、メルカリであそこまで売買が活性化しているのも、この"お小遣い"をベースに購買活動が行われていることが挙げられる。この3757億円が他のシーンでも使われてくるとなると、サービス利用の初期ハードルは一気に下がるためユーザーとしても利用しやすくなるだろう。
もちろん、それ以外のデータによる差別化もあるし、メルカリは「CtoC」という切り口でユニーク性もあるため、そこだけでもうまくポジショニングできる可能性もある。
このあたりは、今後どのようになっていくのか、統廃合、新規参入など含めニュースを追っていきたいところだ。
2019年2月13日、メルペイリリース
2019年2月13日、ついにスマホ決済「メルペイ」がリリースされた。
筆者は勝手に「QR決済」の領域に参入するものと捉えていたが、そうではなく、第一弾としては非接触決済サービス「iD」と連携し、アプリを立ち上げずに決済ができる形となった。
これにより、全国90万箇所の「iD」対応店舗にて、今日からすぐに利用開始できるという。現在は、iOSのみの対応だが、2019年2月末〜3月初旬に Android も対応していく予定だ。
さらに、「MERPAY CONFERENCE 2019」では、QRコード決済への対応も発表されており、非接触決済+QRコード決済により、2019年3月時点で135万箇所における店舗にて利用ができるようになるようだ。
「メルペイあと払い」発表
2019年2月20日、「MERPAY CONFERENCE 2019」にて、「メルペイあと払い」のサービスが発表された。
これは、まさに信用スコアの概念で、メルカリ上の評価データや決済データを元に、「あと払い」に足る信用を持っている人に対して、後払いの機能を提供するというものだ。
信用を元にしたなめらかな社会に向けて、着々と進んできていることが分かる。
「MERPAY CONFERENCE 2019」のデータ利活用周りについて、以下の記事にまとめているので、気になる方はご確認いただきたい。
まとめ
本記事では、メルカリ/メルペイのクレジットスコア事業について整理し考察してみた。
自社のデータをオープンにし、CtoCのビジネスエコシステムを作るという山田会長のビジョンには非常に共感することも多く、一人のユーザーとしても良いサービスができていくことを期待したい。
メルカリについてもっと詳しく知りたい方はぜひこちらを。

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また、アントフィナンシャルについてはこちらの書籍を読めば詳しく分かるので気になる方はぜひ。

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
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