2019年5月15日、MyData Japan 2019 が開催された。
2017年、2018年に次ぐ第3回となる MyData Japan のカンファレンスには、総勢約500人が集まり、パーソナルデータ領域への関心の高まりが伺える結果となった。
今回の MyData Japan 2019 で話題になったテーマの1つとして「情報銀行・PDS」があげられる。
本記事では、MyData Japan 設立者であるインテージ伊藤直之さんのクロージングトークの内容から、GDPR・MyData・情報銀行の関係性について整理していこう。
MyData Japan とは?
まず、MyData Japan 2019 がどのようなカンファレンスなのか理解するために、簡単に「MyData Japan」についてご紹介しよう。
MyData Japan は、2018年に設立された MyData Global の日本拠点にあたる組織だ。
MyData Global では、「個人がパーソナルデータを自分自身のために使い、自分の意思で安全に共有できるようにする」というデータにおける個人中心の考え方を広めるための組織である。
カンファレンスとしての「MyData Japan 2017」及び「MyData Japan 2018」は、これまでオープンナレッジファウンデーションジャパンが主催してきたが、今回それを「MyData Japan」が引き継ぐ形で、MyData Japan 2019 が開催される運びとなった。
そんな「MyData Japan」カンファレンスの内容は、基本的に MyData の思想を引き継ぐものであり、パーソナルデータについての法律・技術・諸外国の状況、教育やヘルスケアといった各領域への応用、そして情報銀行・PDS事業者によるパネルディスカッションと、どれも興味深い内容であった。
GDPR と MyData の関係性
さて、ここからは、クロージングトークで紹介された、GDPR・MyData・情報銀行の関係性について整理していこう。
まず、GDPR と MyData の関係性は、以下のようになるという。
GDPR と MyData は、それぞれ固有の部分もあれば、共通する部分もある。
- GDPR 固有の点:Strengthen, harmonize and clarify data protection(データ保護を補強し、調和させ、明確にする)
- MyData 固有の点:Enable new personal data based services(新たなパーソナルデータベースのサービスを生み出す)
- 双方の共通点:Strengthen individual rights and trust toward data handling(データハンドリングに対する個人の権利と信頼を強化なものにする)
このように、GDPRは「データ保護寄り」であり、MyDataは「データ利活用寄り」になっており、そのベースとしてはデータの個人主権の思想があるというわけだ。
MyData と情報銀行の関係性
では、今注目の「情報銀行」と MyData との関係性はどのようになるのか。
伊藤さんによると、情報銀行と MyData の関係は以下の図のようになる。
このように、「個人益・人権」と「利益・ビジネス」で縦軸をとると、「個人益・人権」寄りに MyData、「利益・ビジネス」寄りに情報銀行をプロットできるという。
それぞれの領域で議論されているテーマとしては、上図のとおり。
「『情報銀行』とMyDataの関係が今後のカギ」とあるように、今後、情報銀行がビジネス的な利益に走って個人の権利をないがしろにするようなことがないようにするためには、MyData 的な考え方が必ず必要になるというわけだ。
まとめ
「情報銀行」という言葉は、「データをお金に変える」といった文脈で、データの個人主権の話は全く触れられぬまままに語られることも多々ある。
ただ、それでは、「次のGAFA」を生むだけになってしまう可能性も高い。すなわち、その運営企業に個人のデータは蓄積されていき、生活者とデータの関係性は変わらない。
とはいえ、営利企業としては利益を上げることが1つのゴールであるため、現実問題として難しい部分もある。しかし、そのハードルをも超えるための手段も工夫次第では考えうる。
たとえば、情報銀行自身ではマネタイズをせずに、別の部分で収益化を図るといったことも考えられる。
情報銀行はまだ正解がない新たな認定制度なだけに、そのあるべき姿については今後議論を深めていきたいところだ。
なお、MyData Japan は、近々一般社団法人化し、これから組織としてさらに活動を広げていくという。法人だけでなく個人でも参加できるとのことなので、興味のある方はぜひチェックしていただければと思う。