中国の信用スコアというと、アリババ系列のアントフィナンシャルが提供する「芝麻信用」のスコアが一般的だ。
中国のシェアバイク最大手のうちの1つである「ofo」も、例外ではなかった。
ofo は、2017年5月にアントフィナンシャルと戦略的パートナーシップを結び、芝麻信用のスコアが高ければデポジットを免除するサービスを提供していた。
しかし、ofo はその翌年である2018年の6月には、その提携を解除し、独自の信用スコアシステムの提供を開始したのだ。
その理由はどこにあるのだろうか?
本記事では、ofo が芝麻信用から独自の信用スコアに移行をした理由と、競合サービスである mobike や hellobike の信用スコア領域における動向について整理していこう。
ofo の独自の信用システムと移行の理由
ofo は、2017年5月にアントフィナンシャルと戦略的パートナーシップを結び、芝麻信用のスコアが650以上のユーザーには、通常99元(約1,600円)のデポジットを免除するサービスを提供していた。
しかし、その翌年の2018年6月には、自社独自の信用スコアシステム「Singularity」をリリースした1。このタイミングで、アントフィナンシャルとの提携は解除し、芝麻信用から移行している。
この独自システムへの移行の理由は、どこにあったのだろうか?
ofo の CEO、Yu Xin 氏は以下のように語っている。
芝麻信用と提携していたのは、自社のビッグデータ収集技術が未熟だったためだ。
ofo の信用システムは、完全にユーザーの行動に基づいており、シェアバイクユーザーにより適したものになっている。
Ofo Introduces Its Own Credit System - Urban Family Shanghai
これまでは、芝麻信用を利用してきたが、自社のデータが蓄積され分析体制が整ったことで、芝麻信用よりも自社サービスに適したスコアリングが可能になったというわけだ。
200万以上のユーザーを抱え2、DAUにして1000万近くに達する3巨大サービスだからこそ、できた判断といえるかもしれない。
ちなみに、ofo 独自の信用スコアでは、270点からスタートし、ofo 内のユーザー行動により最大で600点まで上がるようになっている。
ハイスコアのユーザーには、芝麻信用と同様にデポジット免除を、さらに低スコアのユーザーには追加料金を求めるような仕組みになっている。
mobikeも独自の信用スコアをリリース
ofo の競合サービスである「mobike」も、独自の信用スコアサービスをリリースしている4。
以下のように、0〜1000のスコアで5つのランクに分類される仕組みになっている。
- 0-300:Poor
- 301-500:Fair
- 501-600:Good
- 601-700:Excellent
- 701-1000:Outstanding
これらのランクにより、たとえば、Poor や Fair であると、割安なマンスリーパスの購入や事前予約機能の利用ができなくなるといった制約が課せられる。
一方、ハイスコアではクーポンやバウチャーをもらえるというメリットがある。
業界3位の Hellobike は芝麻信用を利用
シェアバイク業界第3位で、ofo と mobike を急ピッチで追いかけるのが「Hellobike」だ。
同社は、アントフィナンシャルからの投資も受け、小都市を中心に急成長を見せている企業だ。
Hellobike については、アントフィナンシャル資本が入っていることも影響しているのか、芝麻信用のスコアを利用したデポジット免除サービスを引き続き提供している。
今後、さらにユーザー数が拡大してきた際に、独自の信用システムを構築するようになるのか、注目である。
まとめ
本記事では、ofo が独自の信用スコアシステムに移行した理由、そして、シェアバイク領域の競合サービスである mobike と Hellobike の動向についても合わせて解説してきた。
芝麻信用のような1つの信用スコアだけでなく、各サービスで信用スコアリングをする未来が来るのだろうか?
「信用スコア」というとハードルが高そうに思えるが、ofo や mobike の例をみると、それぞれ各サービスをルール通りに利用しているかどうかを示すスコアを作成しているわけで、「信用スコア」というほど高度なものではないと捉えることもできる。
一方で、彼らほどの膨大なユーザーデータを保有するサービスだからこそスコアの精度を担保できているというのは確かだろう。
今後、このトレンドが他領域にも広まっていくのか、芝麻信用として何らかの策を打つのか、注目である。
また、ofo は車両代金の未払や保証金の未返却などで経営危機も噂される5。シェアバイク業界そのものについてもどうなっていくのか注目どころである。