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【図解】平安医好生(Ping An Good Doctor)による平安保険のコミュニケーション戦略

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世界最大の保険会社「平安保険グループ」をご存知だろうか?

1988年の設立以来、保険領域に加えて、銀行、投資、インターネット金融サービスとその領域を拡大してきた。

 今や、時価総額においては、中国のテクノロジー業界のビッグ3と呼ばれる BAT (Baidu, Alibaba, Tencent)の一角であるバイドゥを超える規模感となっている。BAT ではなく、TAP(Tencent, Alibaba, Ping Ang Insurance)だという人もいるくらいだ。

 そんな平安保険グループには、保険を中心とした業務では、顧客との距離感がどうしても遠くなってしまうという課題があった。

 それを解決し、大きな飛躍につなげたのが、平安医好生(Ping An Good Doctor)というサービスの誕生であった。

 本記事では、その平安医好生(Ping An Good Doctor)のサービス概要と平安保険グループにおける平安医好生の立ち位置について、解説していこう。

平安医好生(Ping An Good Doctor)の概要

平安医好生(Ping An Good Doctor)は、2014年8月に平安保険グループの子会社として設立された会社であり、2015年に同名のアプリをリリースしている。

平安医好生(Ping An Good Doctor)のアプリでは、主に「O2Oの総合健康プラットフォーム」を提供しており、まさに中国における医療の中心ともいうべき存在だ。

2018年には、医療系サービスとしては異例のスピードで、香港市場への上場(IPO)を果たし、約8,200億円のバリュエーションがついた(現在は中国市場全体の株価低下もあり、若干落ちている)。

ちなみに、2017年の上場前の投資ラウンドでは、ソフトバンクのビジョンファンドがリードインベスターとして入っており、孫さんの目の付け所もさすがである。

ビジョン

平安医好生(Ping An Good Doctor)のビジョンは、以下の通り。

すべての家族に専属のかかりつけ医サービスを提供すること、すべての人に健康管理の電子記録を提供すること、そして中国のすべての人に健康管理プランを提供すること

このビジョンがなぜ共感を呼ぶのか?その鍵は、中国の医療における特殊な課題がある。その課題についてまずは見ていこう。

3時間の待ち時間、3分の診察

中国では、患者と医師の間で、医療事故によるトラブルが以前から多く発生した。そして、その影響で、患者は小型のクリニック等を介さずに、はじめから大型の医療機関に足を運ぶようになっていた。

ただ、そうなると、容易に予測ができるように、大型医療機関に患者が殺到することで、待ち時間は長くなるばかり。

また、軽い病気でも大型の医療機関へ向かう患者が多いため、1件あたりの診察時間は短いこともあり、「3時間の待ち時間で、3分の診察」といった状況になっていることも多かった。

このような課題を解決するのが、平安医好生(Ping An Good Doctor)である。

平安医好生の提供サービス

平安医好生(Ping An Good Doctor)では、O2Oの総合健康プラットフォームとして、以下のような機能を提供している。

  • 医療サービス
    • 7×24時間のオンライン問診
    • 遠隔診療
    • 病院予約
    • 検診予約
  • 保険品や保険器具のEC
  • 処方薬の宅配
  • 健康情報メディア
    • 記事に加えてライブ配信も
  • 歩数計

コアとなるのは、医療サービスの部分だ。オンライン問診や遠隔診療により診察の効率化を助け、実際にオフラインの医療機関に行く必要がある際には、病院や検診の予約を行うことができる

さらに、処方箋が出た場合には、処方薬のデリバリーにも対応している。

また、ユーザーへの情報提供として、健康情報メディアとしての一面も担っており、Toutiao(日本でいうスマートニュースのようなニュースアプリ)の記事を流したり、LIVE動画配信を視聴する機能もある。

1日あたりの診察数は37万件超え

平安医好生(Ping An Good Doctor)がいかに利用者層を広げているかがわかる数字をいくつか紹介しよう。

平安医好生(Ping An Good Doctor)では、現在1.9億人のユーザーを抱えており、1日あたりの診察数は37万件に上る。

診察データは累計で3億件以上が蓄積されており、これをもとにAI診断を行い、人間の医師をサポートすることに役立っている。これにより、従来の5倍近い効率で診察が行われている。

内部スタッフは1,000人ほど、外部のドクターは4万に達する。さらに、3,100の病院、1,100の診療所、500のデンタルクリニック、1万の薬局と提携をしており、まさにプラットフォームの体をなしている。

平安保険グループにとっての位置づけ

そのような平安医好生(Ping An Good Doctor)を、平安保険グループの視点からみると、また面白い発見がある。

平安保険グループは、1988年設立の保険事業から始まり、銀行、投資、インターネット金融サービスと領域を拡大し、今や時価総額20兆円近くとなっている巨大企業だ。

その平安保険グループには、顧客との距離が遠いという課題があった。やはり、保険事業という特性上、生活者が常に接するものではないため、生活者とのコミュニケーションをとろうにも適切なタイミングで適切なコミュニケーションをとることが難しかった

そこで、生活者との接点を作るために誕生したのが、平安医好生(Ping An Good Doctor)というわけだ。

図解をすると、以下のようになる。

平安保険グループにおける平安医好生の役割
平安保険グループにおける平安医好生の役割

今まで距離のあった、生活者と保険事業との間に、平安医好生(Ping An Good Doctor)アプリが介在することで、生活者との接点ができ、さらに生活者のデータが蓄積されていく。

そうすることで、データを元に、必要な場合には保険についてのレコメンドをするといった、適切なタイミングで適切なコミュニケーションをとることが可能になったわけだ。

ちなみに、このような企業目線の戦略の話は一面としてあるが、平安保険グループは「顧客満足度」を第一のKPIとしたNPS経営としても知られており、もちろん顧客目線でサービスが提供されていることは付記しておきたい。

まとめ

本記事では、平安保険の子会社である「平安医好生(Ping An Good Doctor)」のサービス内容、及び平安保険グループにおける平安医好生(Ping An Good Doctor)の役割について、解説をしてきた。

中国ほどではないが、日本でも病院やクリニックでの待ち時間の問題といった課題はあるだろう。また、今後、高齢化が進んでいくにつれ、遠隔診療のニーズも間違いなく高まっていくだろう。

そのような中、平安医好生(Ping An Good Doctor)のようなサービスが日本に出てくることも期待される。現時点における最有力は、LINEとエムスリーの合弁会社である「LINEヘルスケア」だ。

LINEヘルスケアは2019年中に「医療相談」のサービスとしてローンチ予定。法律の改正が絡む部分もあるが、今後のサービス拡充に注目していきたい。

参考書籍

平安保険グループのNPS経営について、詳述されている本。冒頭に、Ping An Good Doctor についての話も出てくる。

平安保険グループの衝撃―顧客志向NPS経営のベストプラクティス

平安保険グループの衝撃―顧客志向NPS経営のベストプラクティス

  • 作者: ジャーイン・シュ,チャン・ホン,株式会社ビービット
  • 出版社/メーカー: きんざい
  • 発売日: 2018/08/10
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