忘れられる権利やデータポータビリティは世の中一般では求められているのだろうか?
総務省が19年3月に行った調査によると、「簡単にデータを削除できるサービス」を8割以上の消費者が求めているなど、興味深いデータが明らかになった。
本記事では、その総務省のアンケート調査を元に、忘れられる権利やデータポータビリティに対する利用者の意識について、考えていこう。
- 総務省「デジタル・プラットフォームの利用状況及び意識に関する調査」の概要
- データを簡単に削除できるサービスを希望する人は8割超
- データポータビリティの希望は3割ほど
- ネット系巨大企業へのデータ集中に抵抗を感じる人は約8割
- まとめ
総務省「デジタル・プラットフォームの利用状況及び意識に関する調査」の概要
今回参考にするのは、総務省が19年3月に行った「デジタル・プラットフォームの利用状況及び意識に関する調査」という調査だ。
調査の対象者や手法は以下の通り。
実施要領
- 期間:平成31年3月20日~3月21日
- 調査方法:委託調査(webアンケート)
- 調査対象:アンケート調査会社が保有するアンケート専用モニター
- 回答者条件:オンライン・サービス利用者
- サンプル数:2,073(※日本の人口比率に合わせた世代・性別にて割付)
※ オンライン・サービス:検索サービス、SNSサービス、メッセージ配信サービス、 インターネットショッピング・サービス、アプリダウンロードサービス等
アンケート項目
- オンライン・サービスの利用状況及び利用意向
- オンライン・サービスの利用規約の理解度
- 個人情報・利用履歴等の取扱いに関する意識
- データポータビリティに対する意識
データを簡単に削除できるサービスを希望する人は8割超
まず驚きだったのが「個人情報や利用履歴等のデータをサイトから好きな時に簡単に削除できるサービスを希望しますか。」という質問に対して、82.6%が「希望する」あるいは「どちらかといえば希望する」と答えている点だ。
「データを削除」することへの高いニーズ、あるいはデータを不必要に保存されておくことへの嫌悪感のようなものが生活者の大半の中であることが分かった。
データポータビリティの希望は3割ほど
また、データポータビリティについての「個人情報や利用履歴等を簡単に他社のオンライン・サービスへ持ち運べるサービスを希望しますか。」という問いに対しては、30.9%が「希望する」あるいは「どちらかといえば希望する」と回答する結果になった。
データの持ち運びをするケースとしては、「より便利なサービスが出てきた場合」が最大で66%、その他には、利用中のサービスで問題が生じた場合、身近な人が使っている別のサービスが出てきた場合が上がっている。
このように、現在利用中のサービス以外に新たに便利なサービスが出てきたり、利用中のサービスに問題が生じた場合に、データを移行して他のサービスを利用したいというニーズが一定数あることが分かった。
ネット系巨大企業へのデータ集中に抵抗を感じる人は約8割
また、データポータビリティと関連する質問で「個人情報や利用履歴等が、オンライン・サービスを提供する巨大な会社に集中することへ抵抗を感じますか。」という問いに対しては、79.7%が「感じる」あるいは「どちらかといえば感じる」と回答し、ネット系巨大企業へのデータ集中に対して多くの人が抵抗を感じていることがわかった。
この巨大企業へのデータ集中への解の1つが先述の「データポータビリティ」であったり、あるいは個人でデータを管理する分散型PDSといったものであったりする。このあたりの解決策が近い将来必要になってくるだろう。
まとめ
本記事では、総務省の「デジタル・プラットフォームの利用状況及び意識に関する調査」を元に、忘れられる権利やデータポータビリティに関連するアンケート結果について抽出してご紹介してきた。
筆者はいわゆるネット業界に身をおいて長いため、特にデジタル系の問いにおいて一般的な感覚と若干ズレてしまう時もある。そのような時に、このようなアンケート結果は非常に参考になる。
忘れられる権利やデータポータビリティは、個人情報保護法の見直しや新法などで議論が活発化しているところだ。今後の動向に注目していきたい。