新生銀行グループのセカンドサイトによる信用スコア「SXスコア」をご存知だろうか?
SXスコアは、2018年4月に発表され、すでに正式に提供が開始されている数少ない信用スコアのうちの1つだ。
静岡銀行と実証実験を行うなど、今後の展開が気になるサービスである。
本記事では、そんな新生銀行グループの信用スコア「SXスコア」について、その仕組みや利用データ、信用スコアの活用先について解説していこう。
SXスコアとは?
まず、「SXスコアとは何か?」について、解説していこう。
SXスコアとは、新生銀行のグループ会社であるセカンドサイトが提供している信用スコアである。
信用スコアの算出に利用するデータは、新生銀行のグループ統合顧客データベース「YUI Platform」を利用することで、新生銀行グループのデータを集約している。
「SXスコア」には、複数のスコアがある。
最も一般的なものが「SXリスクスコア」だ。これは、個人や法人の与信審査の判断に利用できるスコアだ。いわゆる「信用スコア」である。
次に、「SXマーケティングスコア」というマーケティング利用のスコアがある。こちらは、顧客の購入する可能性の高い商品を理解するために利用される。
さいごに、「BTTC(Best Time to Call)スコア」というCRM向けのスコアがある。こちらは、顧客へ連絡する際の手段や時間帯に関する好みをスコア化したものだ。
「信用スコア」という意味では「SXリスクスコア」が該当するため、以下では、「SXリスクスコア」のことを「SXスコア」と称して話を進めていこう。
運営のセカンドサイトはどのような会社か
SXスコアの運営企業である「セカンドサイト」という会社については、初見の方も多かったのではないだろうか?
セカンドサイトは、「新生フィナンシャル株式会社」と「株式会社グリフィン・ストラテジック・パートナーズ」によって2016年に設立された会社だ。
新生銀行グループの知見や信頼性と、グリフィン・ストラテジック・パートナーズのデータ分析力やスピード感を融合させることが狙いだ。
セカンドサイトでは、SXスコアの開発以外にも、出店スコアリングモデルの構築やクラウド分析基盤の構築などを手がけている。
SXスコアの利用データは?
信用スコアにおいて肝となるのは、やはりスコアリングに利用するデータである。
SXスコアの利用データは、以下の3つに分類できる。
- 新生銀行グループの統計データ
- ウェブ上のオープンデータ
- パブリックDMPのデータ
それぞれの利用データについて、解説していこう。
新生銀行グループの統計データ
「新生銀行グループの統計データ」については、新生銀行、系列のクレジットカード・信販会社であるアプラス加盟店、新生フィナンシャルのデータを匿名化して利用している。
3社をあわせて約1,000万人のデータを活用している。新生銀行自体は都内の利用者がほとんどであるが、関連会社も加わることで、日本全国をカバーしている。
ウェブ上のオープンデータ
「ウェブ上のオープンデータ」を利用しているのは、SXスコアのユニークな点である。
2016年の官民データ活用推進基本法において、国及び地方公共団体はオープンデータに取り組むことが義務付けられ1、徐々にデータは増えてきている。
SXスコアにおいて具体的にどのようなデータを利用しているかは公表されていない。
予想でいうと、顧客の住居エリアから統計的に資産レベルを予測するといった利用の仕方だろうか。
パブリックDMPのデータ
「パブリックDMPのデータ」については、複数のDMP事業者からデータ提供を受けているということだ。
国内のDMPで保有データ量の多い Intimate Merger や Audience One などと連携をしているのだろうか。
パブリックDMPの保有データは、ウェブ上のクッキー単位の行動データがほとんどである。閲覧しているサイトの内容などから、その人の信用度合いを測るのだろう。
もしかしたら、パブリックDMPのデータについては、「SXマーケティングスコア」のほうに主に利用しているのかもしれない。閲覧サイトにを元に趣味嗜好や購買タイミングなどを予測することは、アドテク業界でもされていることだからだ。
SXスコアの活用先は?
SXスコアの活用先としては、グループ会社内では、新生銀行におけるコンシューマー・ファイナンス業務の与信審査、マーケティングスコアの向上に利用される。
また、第三者機関への提供も実施する。
たとえば、静岡銀行とは2018年4月〜6月で実証実験を行っている2。
静岡銀行との実証実験においては、小規模法人や個人事業主向けの融資審査の判断の高度化を目指しているということだ。SXスコアは、法人における融資にも利用できるようだ。
また、大手保険会社でもすでに導入が進んでいるとプレスリリースにおいて発表している3。
上図のように、SXスコアは、現状のスコアと併用することで、金融機関に対して新たな気付きを与えるようなポジションを狙っているようだ。
さらに、「スコアに基づきパーソナライズした金融商品の設計を行うことも可能」とのことで、今後の活用幅の広がりに注目だ。
SXスコアの優位性、戦略は?
セカンドサイト取締役COO&CAOの高山博和氏によると、SXスコアの優位性は以下の点とのことだ。
SXスコアの優位性は、オープンデータを使っていることやモダンなアルゴリズムを使って継続的に学習を継続していることにある。今後もスコアの精度を高める取り組みを進めていきたい
たしかに、国内の信用スコアサービスにおいて、オープンデータを利用しているサービスは、SXスコア以外に聞いたことがない。
この優位性のポイントがどれほどスコアの信頼性に寄与するものなのかがポイントである。
まとめ
本記事では、新生銀行グループの信用スコア「SXスコア」について解説をしてきた。
「SXスコア」は2018年4月時点では既に実証実験を行っているため、国内では最先端をいくサービスのうちの1つである。
静岡銀行との実証実験のプレスリリース以来、約1年のあいだ「SXスコア」についての情報は開示していない。
一方で、AIを活用した入居者審査システムの実証実験を実施するなど4、SXスコアにおける知見や技術を周辺領域へ活用していっている様子は伺える。
また、新生銀行と信用スコアといえば、NTTドコモの信用スコア「ドコモスコアリング」の提供を受けて、与信審査を行うサービスを19年3月内にリリース予定だ。
こちらの信用スコアとの棲み分けも気になるところである。
新たな情報が入り次第、これらの情報についてはアップデートしていきたい。
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