インドでは、スタートアップによる信用スコアレンディングが盛り上がりをみせている。
本記事では、先日ご紹介した「CreditVidya」に続いて、同じ領域でサービス展開をする「SHUBH Loans(シュブローンズ)」について解説していく。
SHUBH Loans は、日本からも BEENEXT が Seed ラウンド及びプレシリーズAで投資をするなど、注目のスタートアップだ。
では、SHUBH Loans の会社概要、信用スコアの仕組み、インド市場ならではの特徴的な機能について追っていこう。
- SHUBH Loans 運営の Datasigns 社
- SHUBH Loans の提供サービス
- SHUBH Loans の信用スコアの仕組み
- インドならではの多言語展開と2Gネットワークでも動く軽いアプリ
- まとめ
SHUBH Loans 運営の Datasigns 社
SHUBH Loans(シュブローンズ)はサービス名で、Datasigns(データサインズ)という会社が運営を行っている。
DataSigns は、2016年にインドのバンガロールに設立されたスタートアップ。インドのレンディングスタートアップの中でも、比較的新しい企業だ。
これまでに、570万ドル(約6.3億円)を調達している。そして、日本のVCである BEENEXT が Seed とプレシリーズAの両ラウンドに参加している。
創業者でCEOの Monish Anand 氏は、SHUBH Loans のリリースの経緯について、次のように語っている。
The interest rate charged by these informal channels has no limit and people's perils are distressing. Borrowers are led into a vicious cycle of loans. I realised that the Next Billion was completely underserved by traditional, organised financial firms. They needed a streamlined and transparent way to borrow credit.
(意訳)非公式のチャネルにより課せられる金利は上限がなく、人々の危険は痛ましい。借り手はそうしてローンの悪のサイクルに入っていってしまう。私は、"Next Billion(次の10億人)" は、伝統的で組織的な金融機関から完全に過小評価されていると確信した。彼らには、合理的で透明性の高いお金を借りる手段が必要なんだ。
CEO の Monish 氏は、このような課題感を持っていた中、モバイル機器の価格の下落、国民IDである Aadhaar の普及、デジタルフットプリントの増加というタイミングを待ち、2016年に創業に至った。
SHUBH Loans の提供サービス
SHUBH Loans では、「信用スコアを含む無料のクレジットレポート」と「そのスコアに応じた提携金融機関による融資」を提供している。
上図にように、SHUBH Loans の信用スコアは1〜100で算出される。「Bank Balance」「EMI to income」など、各項目ごとの評価も見ることができる。
SHUBH Loans では、この信用スコアを金融機関に提供することで、融資を可能にしている。
CEO の Monish 氏は、SHUBH Loans の事業のことを、「RaaS(Risk-as-a-Service)」とも呼んでおり、金融機関に対してリスク評価を提供しているという意味合いだろう。
融資の金額は、₹50,000 - ₹500,000(約8万円〜80万円)、金利は18%〜30%。現在の対象ユーザーは、月間のサラリーが₹12,000(約1.8万円)以上のユーザーとなっている。
SHUBH Loans の信用スコアの仕組み
では、SHUBH Loans の信用スコア及びクレジットレポートはどのように生成されるのだろうか?
公式サイト記載の情報によると、登録時に以下の情報を入力することになっている。
- PAN(Payment Account Number)
- Aadhaar(国民ID)
- 銀行の取引明細書
- education(学歴)
- employment(雇用状況)
さらに、公式のサービス動画では、以下のようなシーンがある。
このシーンから、おそらく以下のデータについても利用していると想像できる。
- SNS(Facebook, LinkedIn, Instagram)
- 通話やテキストデータ
これらのデータを元に、独自のアルゴリズムで信用スコアリングを行っているようだ。
インドならではの多言語展開と2Gネットワークでも動く軽いアプリ
SHUBH Loans は、サービスの機能として、以下の6点をあげている。
この中でインド市場特有の機能として、「Local Languages」と「Lightweight App」に注目だ。
インドでは、ローカル言語を日常的に利用している国民もまだ多く、そのようなユーザーに対してソリューションを提供する際には、このような機能が必要になってくる。
SHUBH Loans では、English、Hindi、Kannada、Telugu、Tamil、Marathiの6つの言語に対応をしている。
また、Lightweight App は、通信が安定しないあるいは遅い地域への対応だ。具体的には、2Gネットワークでも実用できるような作りにしている。
このように、SHUBH Loans は、インドの伝統的な銀行では借り入れができない層へのソリューションのため、彼らの環境を考慮した上でサービスを展開しているということが分かる。
まとめ
本記事では、SHUBH Loans の企業概要、提供サービス、信用スコアの仕組み、特徴的な機能について解説をしてきた。
特に、多言語対応やライトウェイトアプリの提供などは、インド市場ならではの機能で興味深かった。
直近の数字が公開されていないため、どこまで伸びているかは分からない。
ただ、2016年の創業で2017年時点ですでに6万人以上が利用、そして月間成長率50%というデータはあるため、現在どこまで成長しているのか気になるところだ。
SHUBH Loans 及びインドの信用スコアレンディング市場には、引き続き注目していきたい。