WeChat を運営するテンセントは、ついに満を持して、信用スコア「微信支付分(WeChat Pay Points)」を発表した。
中国の信用スコア領域では、アリババ系列の「芝麻信用(ジーマクレジット)」が2015年1月のリリース以来大きく勢力を拡大しており、テンセントとしては後塵を拝する形になっている。
ただ、Alipay に対する WeChat Pay がそうであったように、ここからの急激な追い上げも十分に考えられる。
本記事では、そんなテンセントの「微信支付分(WeChat Pay Points)」の利用データやスコアリングの仕組み、芝麻信用との違いなどについて、解説していこう。
微信支付分は19年1月についに正式発表
テンセントの「微信支付分(WeChat Pay Points)」は、19年1月9日に開催された「WeChat Open Class PRO」にて初めて正式に発表された。
これまでも、2018年の中頃より一部の都市でテスト的に運用がされており、19年1月時点では、北京、上海、広州、深圳の4都市では利用できる状態になっている。
そして、これから本格リリースをして、2019年中には、中国全域で利用が可能になる予定だ。
微信支付分(WeChat Pay Points)は、アントフィナンシャルの芝麻信用のテンセントバージョンともいうべきもので、スコアに応じてデポジット免除など生活シーンでの利用がメインとなりそうだ。
信用スコアの上限と下限は、芝麻信用とは若干異なっており、それぞれ以下のようになっている。
- 芝麻信用:350〜950点
- 微信支付分:300〜850点
両方の信用スコアを利用するユーザーも多くなるだろうから、統一してほしかった感は否めない。
微信支付分のスコアリング方法
微信支付分(WeChat Pay Points)は、以下の3つの構成でスコアリングがなされている。
- Identity Traits:氏名などの基本的な情報
- Consumption Characteristics:WeChat Pay による消費行動
- Compliance History:各種サービスの利用動向
ここにおいては、一般的な信用スコアと同様で、決済データやサービスの利用データといった今までの信用スコアリングに利用されていなかったデータを活用していく方針だ。
テンセントは、technodeの取材に対して、以下のように回答している。
The credit score is calculated based on WeChat Pay’s pool of data, particularly on personal consumption behavior and the ability to keep obligations
微信支付分は、WeChat Pay に蓄積されたデータ、特に、個人の消費行動と義務(債務)を守る力によって算出されている。
さらに、中国メディア THE PAPER では、以下のように報じている。
WeChat payment score is similar to Alipay's “sesame credit”, but based on the social relationship chain in WeChat, the WeChat payment score between friends will affect each other.
微信支付分は、アリペイの芝麻信用に似ているが、WeChat 内のソーシャルな人間関係に基づいており、友達の微信支付分はお互いに影響し合う。
芝麻信用でも、Alipay における「資金のやり取りに基づく関係」は信用スコアリングに用いられているとのことだが、微信支付分ではその重要性がさらに高いということかもしれない。
微信支付分の利用ケース
たとえば、充電バッテリーサービスのXiaodian(小電科技)では、微信支付分をサービスに組み込んでいる。
通常、Xiaodian(小電科技)でレンタルを行う際には、デポジットが必要だが、微信支付分で一定以上のスコアの場合には、そのデポジット(保証金)なしで充電器のレンタルができる。
その他、各種サービスで、デポジット免除のほか、あと払いサービスの提供なども行っている。
微信支付分の利用方法
では、微信支付分の実際の利用方法についてみてみよう。
微信支付分は、現在、特別な入り口があるわけではなく、微信支付分を導入しているサービスの利用時に自然な導線としてでくるようになっている。
たとえば、以下のキャプチャのような流れだ。
あるサービスを利用しようとして、微信支付分のスコアが550以上であれば保証金免除が受けられる。
次の画面で、微信支付分へのアクセスを許諾し、実際にスコアが表示される。
ここで、今回の場合には、信用スコアは590点で550点以上だったため保証金免除となり、次へ進めるという流れだ。
騰訊信用との違いは?
テンセントによる信用スコアというと、18年1月にリリースされた「騰訊信用」という信用スコアサービスがある。
しかし、この「騰訊信用」はたった1日でクローズしている。
そこから1年が経過したタイミングで、名前もリニューアルし再スタートを切ったことになる。36Kr の記事によると、「騰訊信用」から「微信支付分」へサービスが変更した背景には、チーム自体の変更もあったという。
詳しいところまでは分からないが、チーム自身もサービス名も入れ替え新たなスタートを切って1年でのリリースとなったわけだ。
日本の記事では、「騰訊信用」が広く使われているといった内容のものもあるが、それは誤った情報なので、鵜呑みしないようにご注意いただきたい。
まとめ
本記事では、テンセントによる信用スコア「微信支付分(WeChat Pay Points)」について、解説をしてきた。
中国の信用スコアといえば芝麻信用という印象が強いが、ここから、WeChat 有するテンセント勢力がどこまで盛り返してくるか注目どころである。
「芝麻信用のスコアを上げるために Alipay で決済をする」といった消費行動もあるというが、微信支付分の出現により、その消費行動にも変化が生じるかもしれない。
決済を巡る争いと密接に結びついた信用スコアにおける争い、これからシェアの推移に注目だ。
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