米国はクレジットスコア社会とも呼ばれる。
Equifax、TransUnion、Experian という三大信用調査機関が国民のクレジットスコアを計算し、そのスコアはクレジットカードの審査や賃貸契約に利用されたり、さらには就職の際の参考にもされるという。
日本でも、LINEやヤフー、ドコモといった大企業が信用スコア領域への参入を発表しており、今後さらに注目が高まっていきそうだ。
本記事では、米国のクレジットスコアの最新事情について解説し、日本の信用スコアについて考える思考のヒントになればと思う。
アメリカのクレジットスコア事情
まず、米国のクレジットスコアのプレーヤーについて整理しておこう。
クレジットスコアのスコアリングモデルを提供している企業と、そのスコアリングモデルを利用して実際のクレジットスコアを算出している企業がある。
前者のスコアリングモデルとしては、フェアアイザック社(The Fair Issac Corporation)が開発した「FICO」というスコアリングモデルがなんと90%以上のシェアとなっており、独占状態だ。
一方、後者のクレジットスコアの算出・提供企業については、Equifax(エキファックス)、TransUnion(トランスユニオン)、Experian(エクスペリアン)の信用調査機関3社による寡占状態となっている。
スコアリングモデルに関しては、Equifax、TransUnion、Experian の3社により、「VantageScore」という新たなスコアリングモデルも開発されている。
さらに、近年では、新興スタートアップが独自のスコアリングモデルにより融資やクレジットカード発行サービスを提供する動きであったり、クレジットスコアを簡単にモニタリングできるサービスを提供し、100億円前後の資金調達をしていたりする。
以下では、それぞれについて、もう少し詳しく解説していこう。
FICOとは?
FICOとは、フェアアイザック社(The Fair Issac Corporation)により開発及び提供されているクレジットスコアリングモデルだ。
1989年の提供開始以来、シェアを拡大し、同社によると、現在アメリカの貸し手の90%以上が FICO のクレジットスコアリングモデルを利用しているという。
いうならば、米国におけるクレジットスコアリングのデファクトスタンダードといえるものだ。
FICOスコアリングの利用データ内訳
では、FICOスコアリングではどのようなデータが利用されているのだろうか?
下図は、FICOがスコアリングに利用しているデータを示したものだ。
- Payment History(支払い履歴):35%
- Amounts Owed(借り入れ上限額の何割を利用しているか):30%
- Length of Credit History(クレジットヒストリーの長さ):15%
- Credit Mix(クレジットの種類、構成):10%
- New Credit(新規借り入れ額):10%
このような比率で各データは利用されている。
VantageScore(ヴァンテージスコア)とは?
VantageScore(ヴァンテージテージスコア)とは、Equifax、TransUnion、Experian という米国の三大信用調査機関が2006年に開発したクレジットスコアのスコアリングモデルだ。
FICOと似ているところも多いが、より理解しやすく適用しやすいスコアリングモデルをということで、開発された。
スコアリングモデルは数年単位でアップデートされており、「VantageScore 2.0」や「VantageScore 3.0」というように、OSのバージョンのような表記をされたりする。
ただ、現時点では、三大信用調査機関が未だにFICOが90%のシェアを保持しており、開発をした Equifax、TransUnion、Experian 自身もFICOを利用している状態だ。
なぜ VantageScore に移行していかないのかと疑問に思い検索をしてみると、Quora に以下のようなQAがあった。
簡単にいうと、信用調査機関は、保守的で「Change is hard.」だから、とのこと。
これはなかなかに根が深くそう簡単には変わらなそうだ。
VantageScoreのスコアリングの利用データ内訳
さて、その VantageScore だが、スコアリングに利用するデータの内訳も FICO とは若干異なっている。
また、明確に各割合が決まっているわけではなく、以下の4つの影響度合いで示している。
- EXTREMELY INFLUENTIAL
- HIGHLY INFLUENTIAL
- MODERATELY INFLUENTIAL
- LESS INFLUENTIAL
それぞれに当てはまるのは以下のような項目だ。
FICOとVantageScoreの違い
FICO と VantageScore の大きな違いとしては、以下の5つの観点が挙げられる。
- 必要なクレジットヒストリーの長さ
- 粗税先取特権と民事判決が入っているか否か
- 信用照会のカウント方法
- トレンドデータか一時点のデータか
- 業界特化のスコアがあるかどうか
それぞれ簡単に説明しよう。
必要なクレジットヒストリーの長さ
FICOでは最低6ヶ月のクレジットヒストリーが必要とされているが、VantageScore では最低1ヶ月からスコアリングが可能となっている。
粗税先取特権と民事判決が入っているか否か
2017年6月の消費者信用機関に送る公的書類の変更により、租税先取特権と民事判決のデータが送られなくなった。
FICOでは、未だにこれらのデータが大きなウェイトを締めているが、VantageScore では大きな重みをつけていない。
信用照会のカウント方法
信用照会をすると、クレジットスコアに悪影響を及ぼすことが一般的に知られている。
FICOでは、45日以内の同じタイプの信用照会は1つの信用照会としてカウントするようになっている。
すなわち、たとえば自動車ローンを複数社に問い合わせて比較したいとなったときに、VintageScoreではそれが複数回の信用照会としてカウントされてしまうが、FICOでは1回としてカウントされるため、安心して複数社に対して見積もりをすることができる。
トレンドデータか一時点のデータか
FICO では、申請時の一時点のデータのみを参照するが、VintageScoreでは直近2年間の消費傾向や与信のデータを計算に入れている。
業界特化のスコアがあるかどうか
FICOでは、業界特化のスコアが存在している。
すなわち、自動車ローンに特化したスコア等が存在している。
クレジットスコアをモニタリングするためには?
米国では、このようなクレジットスコアをモニタリングして改善アドバイス等をしてくれる新興サービスが出てきており、多くの人が利用をするようになっている。
CreditKarma(クレジットカルマ)
クレジットスコアモニタリングの第一人者的サービスが、CreditKarma だ。
2017年時点で米国とカナダのユーザー数は8000万人を超えているという。恐るべき数字だ。
Credit Karma は2007年の創業以来、既に8.68億ドル(約950億円)という大型な資金調達をしており、米国のクレジットスコアモニタリングサービスの中では最大のサービスだ。
Credit Karma では、VantageScore3.0 を Transunion と Equifax から取得しており、それをユーザーへ表示している。
そのため、90%のシェアを持つ FICO スコアそのものではないことは認識しておく必要がある。
Credit Sesame(クレジットセサミ)
Credit Sesame も Credit Karma と同様に、クレジットスコアのモニタリングサービスを提供している。Credit Sesame の場合には、TransUnion から VantageScore を取得している。
さらに、Credit Sesame では、ロボアドバイザーサービス等も提供しており、生活者の財務全般のサポートをするビジネスを展開している。
FICO スコアを手に入れるためには?
Credit Karma や Credit Sesame は VantageScore へのアクセスを可能にしているが、FICOのスコアを取得したい場合には、銀行やクレジットカード発行会社に申請をすれば取得することができる。
ただ、申請が面倒なのと、FICOのスコアと VantageScore のスコアには相関性があるといえるため、日々のモニタリングという観点でいうと、VantageScore を可視化できる Credit Karma や Credit Sesame のアプリを参照すれば事足りるであろう。
まとめ
本記事では、米国のクレジットスコア事情として、FICOスコアとVantageScore、及びクレジットスコアをモニタリングするサービスとして Credit Karma や Credit Sesame を紹介してきた。
日本でも、今後、クレジットスコア(信用スコア)が浸透してくるにつれて、このような周辺サービスも出てくるかもしれない。
また、米国では、これら以外にもスタートアップでスコアリング自体を行っている企業も出てきている。こちらについては、別記事にてまとめていきたい。
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