シャオミは、今やスマホメーカーだけではなく、様々なスマート家電を提供するIoTプラットフォームカンパニーだ。
2010年に創業し、中国のスマホ化の波に乗り2013年時点では1.5億人のユーザーを抱えるまでに成長。
そして、今、シャオミはその起源であるスマホ以外にも、充電器やスマートウォッチなどのスマホ関連商品、キックボードや空気清浄機などのスマート家電など幅広く IoT 機器を提供するようになっている。
2013年時点ではスマホメーカーであったシャオミが、現在このように多様な商品を提供できているのには、理由がある。それが「Mi Ecosystem」というインキュベーションモデルだ。
本記事では、そんなシャオミの「Mi Ecosystem」について、その仕組み、利用するメリット、投資対象領域、そして投資基準について整理していこう。
Mi Ecosystem の仕組み
冒頭でも説明したように、シャオミは、今やスマートフォンのみならず、様々なスマート家電を販売している。
このような多種多様な製品を高品質かつ短期間で一挙に世の中に送り出すことを可能にしたのが「Mi Ecosystem」というインキュベーションの仕組みだ。
Mi Ecosystem では、これまで77社をパートナー企業としており、その中には、スマートウォッチの「Mi-Band」や電動スクーターの「Mi Electric Scooter Pro」などが含まれている。
77社のうち、1社はIPO、さらに4社はユニコーン企業にまで成長している。
Mi Ecosystem が他のインキュベーションや投資の仕組みに対してユニークなのは、以下のような点だ。
- 投資はするが、議決権は持たない
- 製品リリースへの全面サポートと厳格な品質基準→「米家(MIJIA)/ 小米(Mi)」の2大ブランドに振り分けて、シャオミのチャネルで販売
- パートナー企業は、その後自社製品の販売も行うことができる
インキュベーションプログラムでありながら、シャオミのブランドで製品リリースすることを当面の目標とし、それに向けてシャオミのノウハウを短期間で吹き込み、高品質な製品を生み出していく仕組みである。
さらに、それと合わせて、パートナー企業の自社製品リリースの販売も推奨している点も面白い。シャオミとしては、パートナー企業の株式を保有しているため、自社製品として販売して成長をしてくれてもシャオミの利益となるわけだ。
たとえば、「Mi-Band」を作った「HUAMI」は、その後、Mi-Band のハイエンドモデルとして「Amazfit(アメーズフィット)」という独自ブランドを打ち出している。
Mi Ecosystem に入ることによる7つの便益
投資先企業として、Mi Ecosystemに入ることには、様々なメリットがある。
Mi Ecosystem では、シャオミ自らを「母艦」、パートナー企業を「特殊部隊」にたとえ、7つの観点で航空母艦式サポートを行っている。
- ブランド:内部テストに合格した製品に対して、「米家」または「小米」ブランドのライセンスを付与。
- サプライチェーン:シャオミのサプライチェーンを利用可能。また、エコシステム内企業でのバルク割も期待できる。
- チャネル:シャオミのECサイト、リアル店舗という強い販売チャネルを利用可能。
- 投資:シャオミが投資することで、他の投資企業から注目が集まる。さらに、シャオミファイナンス(小米金融)による金銭面のサポートもある。
- 製品定義:シャオミとの会議を行い、集団的知性によって戦略を策定できる。
- IDデザイン:デザイン面のサポートも行う。これまでの製品のうち70%は Mi Ecosystem のID部門がデザイン。
- 品質要求:非常に厳格な内部テストに合格しなければ、シャオミ製品としては登録されない。
このように、シャオミから投資を受け、Mi Ecosystem に入ることで、至れり尽くせりのサポートを受けることができるわけだ。
もちろん、シャオミにとってのメリットも大きく、インセンティブ設計がうまくできた仕組みである。
三観一致、経済的自由のある人へ投資
そんなシャオミの投資戦略であるが、投資を行うパートナー企業には、いくつかユニークな条件がある。
まずは、「三観一致」という考え方だ。
三観とは、「世界観」「価値観」「人生観」を指し、これらがシャオミのもつ考えと一致している創業者や企業をパートナーとしている。
Mi Ecosystem の価値観とは、以下の5点だ。
- 短期間で収益を上げようと思わない
- 最高の製品を作り出そうという志
- 製品のハイコストパフォーマンスの追求
- インターネットモデルの先進性を堅く信じる
- 効率アップ、伝統的業界の改造
Mi Ecosystem に入るためには、まずこれらの価値観が一致している必要がある。
また、もう1点面白いのは、「経済的自由のある人」に対して投資をしているという。
経済的自由のある人というのは、たとえば、すでに40代前後で財を築いている人であったり、エクジット経験のある人であったりする。
なぜ経済的自由のある人に対して投資をするかというと、経済的自由のある人であれば、短期的利益に目が行かず、長期的に本当に良い製品作りに集中することができるからだ。
ここからも、シャオミのプロダクトへのこだわりが伺える。
まとめ
本記事では、シャオミ(Xiaomi)躍進の立役者である「Mi Ecosystem」の仕組みとインキュベート戦略について、まとめてきた。
シャオミのその製品力で、日本でも徐々に知名度が上がってきている。この記事がシャオミの認識を「スマホメーカー」から「IoTプラットフォーマー」に変える一助となれば嬉しい。
個人的には、2週間後に中国深センに行く予定があるので、シャオミのリアル店舗に行って様々なプロダクトに実際に触れてみるのが楽しみだ。
なお、本記事の内容は、『シャオミのすべて:世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた』を参考にしている。さらに詳しく知りたい方は、ぜひ読んでみてほしい。

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続編として、Mi Ecosystem を作った理由、投資先の3つの領域について、以下の記事にまとめているので、興味のある方はご確認いただきたい。