dataway

パーソナルデータ利活用の未来を考えるメディア

シャオミが Mi Ecosystem を作った理由とエコシステムの3つのレイヤー構造

シャオミが Mi Ecosystem を作った理由とエコシステムの3つのレイヤー構造

昨日のシャオミの「Mi Ecosystem」によるインキュベート戦略に続いて、今日は以下の2点について解説していこう。

  • シャオミがなぜ Mi Ecosystem という形を取ることにしたのか
  • Mi Ecosystem の投資先の3つのレイヤー構造

前回記事では、Mi Ecosystem の仕組みについて詳しく書いているので、興味のある方はぜひに。 www.dappsway.com

なお、本記事執筆にあたり、『シャオミのすべて:: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた』を参考にさせていただいた。

シャオミのすべて: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた

シャオミのすべて: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた

シャオミが Mi Ecosystem という形をとった理由

シャオミが Mi Ecosystem という形をとった理由

まず、シャオミがなぜ Mi Ecosystem というインキュベーションモデルをとったのかという疑問に迫っていこう。

シャオミのすべて:: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた』によると、その理由は大きく分けて3つある。

  • [実現性] シャオミ本体の人員では困難であった
  • [スピード] シャオミ本体がやるよりも任せたほうが早い
  • [モチベーション] 独立会社にすることでモチベーション維持

それぞれ簡単に解説しよう。

[実現性] シャオミ本体の人員では困難であった

まずは実現性の観点で、シャオミ本体の人員が実行するのは困難であったという点だ。

もちろん、技術力としては可能であるが、スマホ本体の製造ラインとは別に新たな IoT 製品の製造ラインを作る必要があることから、力が分散してしまうことも容易に想像できる。

[スピード] シャオミ本体がやるよりも任せたほうが早い

次に、スピードの観点で、シャオミ本体がやるよりも、勢いのあるスタートアップ企業に任せたほうが明らかに短期で良いプロダクトが生み出せるという点だ。

いくつか数個の製品を作るだけであれば、シャオミ本体でも事足りたかもしれないが、IoTのプラットフォームとして多くのプロダクトラインナップを揃えようとした場合には、シャオミ本体ではいつまでたっても完成できないという判断だ。

[モチベーション] 独立会社にすることでモチベーション維持

最後に、その中でも、子会社などではなく、Mi Ecosystem というインキュベーションモデルをとったのには、独立会社として経済的リターンも担保することでモチベーションを維持しようという狙いがある。

実際に、Mi Ecosystem の77社のうち、1社はIPO、4社はユニコーン企業入りをしていることから、経済的リターンという点でも魅力的だ。

シャオミの投資の三大圏域

では、次に、シャオミの Mi Ecosystem における投資の「3大圏域」について解説しよう。

Mi Ecosystem では、投資先をシャオミ本体の事業との関連性から3つのレイヤーに分けている。図示すると、以下の通りだ。

シャオミの投資の三大圏域
シャオミの投資の三大圏域

このように、以下の3つのレイヤーに分けている。

  • スマホ周辺アクセサリー
  • スマートデバイス
  • 生活消耗品

それぞれどのような狙いがあるのか、簡単に解説していこう。

第一層:スマホ周辺アクセサリー

スマホ周辺アクセサリーの代表格、モバイルバッテリー
スマホ周辺アクセサリーの代表格、モバイルバッテリー

まず、第一層の「スマホ周辺アクセサリー」は、シャオミのスマートフォン「Mi-One」シリーズが獲得した市場シェアとアクティブユーザーによりアドバンテージがある領域だ。

既存ユーザーによるボーナスがあることから、大いに勝算が望める領域であった。

スマホ周辺アクセサリーとしては、モバイルバッテリー、イヤフォン、ヘッドフォンあたりが主力製品となる。

第二層:スマートデバイス

シャオミの電動キックボード。この他に、セグウェイも有名だ。
シャオミの電動キックボード。移動手段としては、セグウェイも有名だ。

次に、スマートデバイスの領域。この領域は、スマートデバイスの爆発期に向けて、シャオミの製造能力とパートナー企業の推進力で新たなデバイスを生み出している。

スマートデバイスは Mi Ecosystem の真髄ともいえるほど、様々なプロダクトがリリースされている。

代表的なプロダクトとしては、電動キックボード、セグウェイ、Mi-Band(Fitbit のようなスマートバンド)、ドローンなどがある。

第三層:生活消耗品

第三層は、生活消耗品。電動歯ブラシやランプなどがある。
第三層は、生活消耗品。電動歯ブラシやランプなどがある。

さいごに、第三層として、タオルや歯ブラシなどの「生活消耗品」の領域だ。

なぜここで「生活消耗品」が出てくるのかを考えると面白い。『シャオミのすべて』の中では、その狙いについて次のような記載がある。

10年後の見識で現在を見ると、個人やファミリーのQOLを高める生活消耗品には、消費のグレードアップのロジックのもと、必然的に巨大な市場が生まれる。もう一つの側面として、シャオミはサイエンステクノロジー企業で、サイエンステクノロジー企業はテクノロジーの最先端に永遠にはいられない「不確実性」という非常に大きな問題がある。しかし、サイエンステクノロジー企業が大量の生活消耗品類を抱えるビジネスを手がけていれば、不確実性のリスクヘッジとなる。

出典:『シャオミのすべて:: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた』 P.42

このように、サイエンステクノロジーとしての不確実性へのリスクヘッジとして生活消耗品を投資領域と定めているわけだ。

実際には、歯ブラシ、LEDライトあたりが現在リリースされているプロダクトだが、今後、上述のタオルのような商品がさらに拡充されていくのか、楽しみである。

まとめ

本記事では、シャオミが Mi Ecosystem というインキュベーションモデルを作った理由と、その投資先の3つのレイヤー構造から、シャオミの狙いについて整理してきた。

以前書いた以下の記事とあわせて、シャオミについての理解を深めていただければと思う。

www.dappsway.com

また、さらに深く知りたい方は、こちらの記事は以下の書籍を参考に作成しているため、書籍の方を手にとってみていただければ幸いだ。

シャオミのすべて: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた

シャオミのすべて: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた

中国テック企業の急成長には、それぞれキーファクターがあるはずだ。シャオミの場合は間違いなく Mi Ecosystem がそのキーとなっている。

今後、他の企業についても考察していきたい。