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ヤフーの信用スコア「Yahoo!スコア」の仕組みと戦略

ヤフーの信用スコア「Yahoo!スコア」の仕組みと戦略 この記事は、2019年6月3日に更新しました。

ヤフーもついに信用スコア(クレジットスコア)事業への参入を発表した。

日本国内の信用スコア領域は、ソフトバンク、ヤフー、LINE、メルカリ、ドコモと日本を代表するプレーヤーが続々と参入あるいは参入を表明し、これから大きく動いていきそうだ。

本記事では、ヤフーの信用スコア(クレジットスコア)における情報整理とそれを元にその勝算について考察していきたい。

「信用スコア」について詳しく知りたい方は「信用スコアとは?信用スコアの仕組みやメリット、利用データについて」をご覧ください。

ヤフーの信用スコア(クレジットスコア)の概要

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https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2018/10/10a/

2018年10月10日、ヤフーは独自のスコアを活用したユーザーへの便益創出及び企業の課題解決を図る実証実験を開始すると発表した。

about.yahoo.co.jp

基本的には、Yahoo! Japan ID に紐づくユーザーデータを元に機械的にスコアを算出し、そのスコアをパートナー企業に提供していくという形だ。

2018年内の本格開始を予定しているとのことで、10月のリリースとしては非常に急ピッチで実証実験を進めていることが分かる。

ヤフーの信用スコアが利用するデータは?

さて、ヤフーの信用スコアでは、実際にどのようなデータが使われるのだろうか?

ここについては、明言はされていないため保有データからの想像とはなるが、基本的には以下のようなデータを使っていくと予想できる。

  • 購買/決済/資産データ
    • ヤフーショッピング及びヤフオクの購買データ
    • YJカードの決済データ/支払い履歴
    • ワイモバイル/ソフトバンクの毎月の支払い履歴
    • ジャパンネット銀行(ヤフージャパン46.57%資本)の資産データ
    • PayPay による決済データ
  • ヤフー関連サービス利用データ
    • ヤフー路線情報やヤフー地図による移動・位置データ
    • ホテルや飲食店の利用履歴
    • TRILL/kurashiru/GYAO!のようなメディア閲覧履歴

こうしてみると、ヤフー系列のデータを集めるだけで、資産関連データについてはかなり充実していることがわかる。ショッピング系から、クレジットカード及びQRによる決済、銀行口座、携帯電話の支払履歴と、これらを統合分析するだけでも有力なデータとなりそうだ。

さらに、ヤフーの強みとしては、様々なC向けサービスを展開している点もあげられる。そこから得られる情報としては、その人がサービス利用において信用できるのかという指標だ。

資産関連データからはその人が金銭的に信用できるのかという指標がわかり、サービス利用履歴からはその人がサービス利用にといて信用できるのかという指標がわかる。

両者は、共通する部分もあれば異なる部分もあり、双方のデータがそろうと「信用スコア」としてより盤石といえよう。

【2019年6月更新】Yahoo!スコアで利用されるデータが開示

ヤフーの信用スコア「yahoo!スコア」で利用されるデータは、以下のように4つに分類ができる(出典)。

カテゴリー 利用データ
本人確認 Yahoo! JAPAN IDにひもづく住所・氏名・電話番号・メールアドレスなどの情報の登録率、登録された電話番号およびメールアドレスの有効性、Yahoo! JAPANが提供するサービスにおける住所確認や本人確認の有無等
信用行動 ヤフオク!における取引実績や評価、ショッピングでのレビュー回数、知恵袋での活躍度、Yahoo! JAPANへの支払い滞納の有無および回数、利用規約・ガイドライン違反の有無および回数、宿泊・飲食店等の予約キャンセル率、キャンセル連絡有無などの行動実績等
消費行動 Yahoo! JAPANが提供するEコマースサービス、Yahoo!ウォレット、Yahoo! JAPANカードなどの利用金額等
Yahoo! JAPANサービス利用 Yahoo! JAPANが提供するサービスの利用頻度などの実績等

このように、従来の予想通りではあるが、Yahoo! JAPANのサービスにおける信用行動、消費行動、利用頻度といったデータを取得し、スコアリングに活かしていることが分かる。

ヤフーの信用スコアの利用先は?

それでは、上述したようなデータを用いて算出したスコアを、どのように利用するのだろうか?

スコアの提供先としては、2018年10月10日時点で以下のようになっている。

<実証実験に参画する企業・団体一覧>※五十音順 ※2018年10月10日現在

  • アスクル株式会社

  • 株式会社イーブックイニシアティブジャパン

  • 株式会社一休

  • OpenStreet株式会社(HELLO CYCLING)

  • 株式会社カービュー

  • 株式会社ガイアックス

  • コスモ石油マーケティング株式会社

  • 一般社団法人シェアリングエコノミー協会

  • ソフトバンク株式会社(BLUU Smart Parking)

  • 株式会社TableCheck

  • パスレボ株式会社

  • バリューコマース株式会社

  • 福岡ソフトバンクホークス株式会社

まず目立つのが、約260社が加盟するという一般社団法人シェアリングエコノミー協会を筆頭に、ソフトバンク株式会社(BLUU Smart Parking)やOpenStreet株式会社(HELLO CYCLING)、ガイアックス(TABICA、notteco等)といったシェアリング系サービスだ。

シェアリングサービスにおいては、個々人の「信用」がサービスにおいて重要度が高く、信用スコアのニーズが高いことも納得だ。

また、次に、ホテル予約の株式会社一休、レストラン予約の株式会社TableCheck、音楽ライブなどのチケット予約のパスレボ株式会社、おそらくプロ野球観戦チケット予約の福岡ソフトバンクホークス株式会社と、予約系サービスが目立っている。

これらについても、きちんと予約通りに毎回参加してくれる生活者(このようなユーザーは信用スコアが高くなるはず)に対して、優遇サービスを提供するなどの価値提供が考えられるだろう。

実際に、プレスリリースの中でも、以下のように、シェアリングサービスの領域において手続きの簡略化や保証金の免除、予約領域においてスコアに応じた先行予約特典の付与について触れられている。

たとえば、シェアリングサービス領域においては、スコアを活用し申し込み時の手続きの簡略化や保証金の免除をはじめ、安心してモノの売買や貸し借りができる環境の構築が期待できます。また予約領域では、スコアに応じて先行的に予約できる特典の付与などが考えられます。

ヤフーの信用スコアの勝算ポイントは?

クレジットスコア領域に参入を表明している企業の中で、最も幅広いデータを保有しているのがヤフーといえる。

スコアの活用先としては、シェアリングサービス、予約系サービスを主に考えているため、シェアリングサービスの領域では特にメルカリ/メルペイと競合することになるだろう。ここについては、PayPay vs メルペイという構図と共に注目していきたい。

また、ソフトバンク×みずほ銀行によるJスコアとの棲み分けについても気になるところだ。親会社であるソフトバンクが手がけるJスコアは既にサービスインしており、信用スコアに応じた個人融資やリワード付与を行っている。

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これは想像だが、「個人融資についてはJスコア」、「シェアリングや予約といったサービス系についてはヤフーの信用スコア」が担っていくという位置づけなのかもしれない。

今後、参入が決まると競合となってきそうな企業としては、ショッピング領域でも競合である楽天もあげられるだろう。

楽天については、C向けサービスはもちろんのこと、 FinTech 領域で近年大きく収益を伸ばしており、その幅広いデータを活用したクレジットスコアの価値の高さは言うまでもない。

【2019年6月更新】7月より「Yahoo!スコア」の外部提供開始へ

7月より「Yahoo!スコア」の外部提供開始へ
7月より「Yahoo!スコア」の外部提供開始へ

ヤフーは、2019年7月より、信用スコア「Yahoo!スコア」の外部への提供を開始すると発表した。

外部における利用用途としては、「優良顧客向けの特別な料金体系の導入」のようなプレミアムサービスとしての利用、「直前の予約キャンセル防止」のようなインセンティブ設計としての利用を想定している。

ヤフーのプレスリリースによると、昨年10月より実施していた実証実験では以下のような結果が得られたという。

実証実験では、シェアサイクルの利用マナーが良いと推定されるユーザーの抽出と特別料金プランの提供、優良と推定されるフリーランスと仕事発注者のマッチング等を実現し、スコアの有効性を確認できました(※下記参照)。また、株式会社一休、株式会社カービュー、パスレボ株式会社等でもスコアの有効性が確認でき、活用に向けて検討を継続しています。これらの結果を受けて、スコアをより広く活用いただくことを目的に、「Yahoo!スコア」のビジネスソリューションサービスの提供開始を決定しました。

このように、実証実験において、C2Cサービスにおける利用や予約系サービスにおける信用スコアの有効性が確認できたことで、本格的なソリューション提供に乗り出したわけだ。

ちなみに、「※なお、お客様ご自身のYahoo!スコアを確認できる機能についても、今後提供することを検討してまいります。」とあるように、Yahoo!スコアは自分自身では確認できない状態からスタートする。

この外部提供開始のニュースを受けて、ヤフースコアは軽く炎上するような結果になった。

何が問題で炎上することになったのか、以下の記事にまとめているので気になる方はご覧いただきたい。

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