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【図解】芝麻信用によるUX革命とインターネットの本質を突く信用スコアの可能性

f:id:show_motto:20190206205726j:plain 中国アントフィナンシャルが運営する世界最大級の信用スコアサービス「芝麻信用」。

その利用シーンは、個人への融資にとどまらず、様々なサービスを利用する際の「信用」としても使われている。

一定の「信用」のスコアがあるユーザーには、デポジットをなくすことができたり、後払いにすることができたりするわけだ。

本記事では、その芝麻信用がサービス利用時に果たす役割と、芝麻信用によるユーザー体験の変化についてまとめていきたい。

信用スコアによるレンタカーの利用体験の変化

信用スコアの導入により、具体的にどのようにユーザー体験が変化するのか?

これを知るためには、具体例をみてみるのが早いので、以下にレンタカーサービスの利用時のユーザー体験フローをまとめてみた。

ちなみに、「神州租車」は、金融系サービス以外で初めて芝麻信用を導入したことでも有名なサービスだ。

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レンタカーにおけるユーザー体験の変化

信用スコアを導入すると、一定のスコア以上(神州租車の場合には芝麻信用650以上)のユーザーに対してデポジットの免除と後払いの権利を与える、といったことができるようになる。

これにより、ユーザーは、銀行口座と連携してデポジットをしてといった面倒なタスクをスキップして、すぐに利用することができる。

それこそ、ミニプログラムであれば、QRコードを読み込んでミニプログラムが立ち上がり、アプリのダウンロードすらなしで利用を開始できたりもする。

このような初期のユーザー導線で面倒な作業をスキップできるのは、ユーザー体験としての大きな飛躍といえるだろう。

実際に、数字としても面白い実績がでている。以下の数字は、信用スコアを導入したレンタカー市場全体で起きた変化を示したものだ。

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芝麻信用導入によるレンタカー業界における数値的変化

レンタルの手続きにかかる時間は60〜80%減少したということだ。

そして、上図の数字でもう1つ気になる点としては、実は信用スコアの導入により、料金や罰金の未払い率、未返還率・紛失率といった数字も大幅に改善されているということだろう。

ここにも面白いトリックがある。この点について、次の章で解説していこう。

「デポジット」から「信用に基づく利用」へ

レンタカーやシェアサイクルのような貸出が発生する事業において、いかにリスクを管理するかは重要な観点だ。

従来の方法は、シンプルに「デポジットをとる」ことであり、これが中国においては当たり前という世界であった。

その従来のルールを変えたのが、芝麻信用の「信用に基づく利用」である。

図解で説明をすると、以下のようになる。

芝麻信用とシェアリングサービスの連携イメージ(筆者作成)
芝麻信用とシェアリングサービスの連携イメージ(筆者作成)

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「信用に基づく利用」というソフトな制約によって、ユーザーは不正によるスコアの低下を避けようとするため、ルールに則った利用を自発的に行うようになり、結果として、サービス運営にかかるコストが削減されたというわけだ。

なんとも素晴らしインセンティブ設計である。

このようなデポジット免除によるサービス提供は、レンタカーやシェアサイクルの他、ホテル、住宅賃貸、民泊、医療、市民サービスといった様々なサービス及び生活シーンに広がりを見せている。

インターネットの本質は非対面の人をどう信用するかの設計

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2013年、衆安保険(アリババ系列のインターネット保険会社)の創業式典の場で、ジャック・マーは以下のように述べている。

われわれは阿里小微の金融サービスとして様々なことに挑戦しました。ですが、われわれが本当にやりたいのは金融ではなく、信用システムなのです。

中国に足りないのは金融機関ではなく、1つの体系的な信用システムなのです。

『アントフィナンシャル』P.199より

アントフィナンシャルは、自社を「FinTech(フィンテック)」ではなく「TechFin(テックフィン)」の会社であると定義し、テクノロジーの会社であることを明言している。

そのアントフィナンシャルが「本当にやりたい」こと、足りないこととして挙げたのが「信用システム」というのは実に興味深い。

インターネットによって人々は対面以外でもつながることができるようになった。ただ、会ったこともない人とやりとりをするとなった際には、その人が信用に足る人かどうかを判断するための情報がどうしても必要となる。

そこに、みんなが信頼できる「信用システム」があれば、その懸念をデータをもって検証することができ、インターネットは水を得た魚のようにその本領を発揮するのである。

これに関連して、元nanapi代表のけんすうさんは、以下のようなツイートをしている(@fukkyy は Gunosy 創業者兼元CEOの福島さん)。

これは、まさにジャック・マーの思考そのもので、インターネットを突き詰めると、信用の設計の重要性に行き着くのだろう。

こうしてみると、信用スコアは、決して個人融資のためだけの数字ではなく、インターネットの本質的な課題を解決しうる可能性に溢れた数字といえる。

日本では、メルペイ社の「信用を創造して、なめらかな社会を創る。」というミッションが、まさにこの領域へのチャレンジとみることができる。まずは決済サービスからだと思うが、今後の動向にも注目していきたい。

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芝麻信用がどのようなデータを利用してスコアリングされているかをまとめている記事。 www.dappsway.com

信用スコア全般について2万字超でまとめている記事 www.dappsway.com

参考書籍

本記事の元となる統計データ等はこちらの書籍から抜粋させて頂いた。フィンテックに関わる人全員におすすめしたい書籍。

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム